小王宮中庭に立って見上げると、かつて空が見えていた場所を、鉄骨の格子と半透明のクッションが覆っています。多くの人が写真に収めるドーム状の中庭は、この屋根のことです。中庭は建物全体の要でもあります。チケット売り場もクロークも、十数のコレクションへの入口も、すべてここに面しています。
いま皆さんが立っているこの宮殿は、1945年2月13日の空襲で焼け落ち、外壁だけが残った廃墟でした。再建には数十年の歳月がかかりまし���。現在の館内では、当時の姿に忠実な復元と現代的な美術館デザインとが共存しており、ザクセン選帝侯ゆかりの国立美術コレクションが収められています。
宝物とともに残った宮殿
ドレスデン城は、何世紀にもわたってザクセンの君主たちの居城でした。選帝侯でありポーランド王でもあったアウグスト強王は、来訪する諸侯の目を奪うための品々でこの城を満たしました。その多くは一度も城を出ることがなく、運び出されたものも再建後に戻ってきました。
それこそがこの城の魅力です。王家の宝物を、無機質な展示室ではなく、宝物を見せるために設計された部屋そのもので鑑賞できるのです。運営しているのはドレスデン国立美術館(Staatliche Kunstsammlungen Dresden、SKD)で、隣のツヴィンガー宮殿もこの組織が管理しています。
ふたつの「緑の丸天井」、まったく異なる見学体験
この名称には、ほとんどの人が戸惑います。「緑の丸天井」はふたつあり、チケットも別々です。
- 歴史的緑の丸天井(Historisches Grünes Gewölbe): 1階にある、アウグスト強王が造らせた当時のままのバロック様式の宝物室です。鏡張りの壁や金箔の飾り棚が続き、品々はケースに入れられず、部屋から部屋へと並べられています。入場は少人数ずつの時間指定制で、温湿度を保つためのエアロックを通って中に入ります。
- 新緑の丸天井(Neues Grünes Gewölbe): 上の階にある、品々を一点ずつケースに収めた近代的な展示空間です。ドレスデン・グリーン・ダイヤモンドや、ヨハン・メルヒオール・ディングリンガーによる「大ムガル帝国皇帝の宮廷」のミニチュアなど、精巧な工芸品を間近で観察できます。
どちらか一方しか見られないなら、ほかでは味わえない体験ができる「歴史的緑の丸天井」をおすすめします。一点一点をじっくり鑑賞したい方には「新緑の丸天井」が向いています。なお、「歴史的緑の丸天井」は2019年に大きく報道された宝飾品盗難事件の舞台となりましたが、盗まれた品の大半はその後回収されています。
宝飾品だけではありません
ほかのコレクションを見る時間も確保しておきましょう。宝物館に引けを取らない見ごたえがありながら、ずっと空いている展示がいくつもあります。
- 巨人の間(Riesensaal): 武器庫の細長い儀式用の広間です。騎士と馬の甲冑や馬上槍試合の装備がずらりと並んでいます。
- トルコの間(Türckische Cammer): ザクセン宮廷が集めたオスマン帝国のテントや武器、馬具が展示されています。目玉は巨大な絹のテントです。
- コイン陳列室(Münzkabinett): 数世紀にわたる硬貨やメダル、勲章を収めています。
- 銅版画素描館(Kupferstich-Kabinett): 版画や素描、写真を、入れ替え制の企画展で紹介しています。
- 公式居室: アウグスト強王の儀礼用の部屋が復元されています。
緑の丸天井のどちらかと武器庫に絞るなら、2〜3時間が目安です。すべてをきちんと見るには丸一日かかり、一度に回るとかなり疲れます。
ガラス屋根の下の小王宮中庭
中庭の屋根は、吹きさらしだった中庭を屋根付きのホワイエに変えるため、再建時に新たに加えられたものです。光が屋根越しにむらなく差し込むので、ドレスデンらしいどんよりした午後でも、砂岩のファサードがくっきりと浮かび上がります。
中庭の真ん中に立ち、ゆっくりと一周見回してみてください。復元された壁と、戦火を生き延びた石積みとの境目がわかります。どの見学ルートも最後にはここへ戻ってくるので、グループで別々のコレクションを回るときの待ち合わせ場所にも便利です。
週末の混雑を避けて入場するには
開館は午前10時です。土曜・日曜は午前11時から閉館の午後5時までずっと混み合うため、午後になれば空くということはありません。午前10時に到着し、いちばん人気の展示から先に回りましょう。
「歴史的緑の丸天井」の枠はオンラインで予約を。 時間指定チケットはSKDの公式サイトで販売されており、人気の時間帯は特に週末にすぐ埋まります。料金も同サイトで確認できます。城全体の共通チケットを持っていても「歴史的緑の丸天井」の枠が確保されるとは限らないので、チケットに何が含まれているか必ず確認してください。
火曜日は休館です。 それ以外の日は月曜日も含めて午前10時〜午後5時に開館しています。月曜日に休むほかの美術館も多いので、覚えておくと重宝します。
荷物は少なめに。 大きめのバッグやコートは、コレクションに入る前に中庭脇のロッカーかクロークに預けます。写真撮影のルールは部屋ごとに異なり、「歴史的緑の丸天井」はほかより厳しく制限されています。各入口の案内表示に従ってください。
遅く着くほど見られる部屋は減ります。 閉館が午後5時なので、昼食後に到着すると、主要なコレクションをひとつ見るのが精いっぱいです。緑の丸天井は午前中に回り、武器庫やコイン陳列室は昼食後に残しておきましょう。
「君主の行列」と城壁沿いの散策
城の見どころには、無料で楽しめるものもあります。アウグストゥス通り(Augustusstraße)に面したシュタールホーフ(旧厩舎の中庭)の外壁を飾っているのが「君主の行列(Fürstenzug)」です。馬に乗ったザクセンの歴代君主の行列を描いた全長100メートルを超える壁画で、マイセン磁器のタイルでできています。1945年の空襲でもほとんど損傷を受けずに残りました。
シュロス広場側の端から歩いていくと、君主たちを時代順にたどれます。写真を撮るなら、朝の光のほうがきれいに写ります。ここから聖母教会やノイマルクトまでは歩いて数分です。
アクセスと周辺の見どころ
城は旧市街の中心にあり、ツヴィンガー宮殿、ゼンパーオーパー、カトリックの旧宮廷教会(Hofkirche)に囲まれています。歴史地区の見どころはどこもここから歩いて回れます。
- 路面電車: テアタープラッツ(Theaterplatz)停留所とポストプラッツ(Postplatz)停留所から、それぞれ城まで少し歩くだけです。
- ドレスデン中央駅から徒歩: プラーガー通り(Prager Straße)を北へ進み、アルトマルクトを過ぎて約20分です。
- エルベ川から: シュロス広場から階段を上ると、川沿いの遊歩道「ブリュールのテラス」に出られます。
一日かけて回るなら、午前中にドレスデン城を見学し、午後はツヴィンガー宮殿のアルテ・マイスター絵画館を訪ねるか、アウグストゥス橋を渡ってノイシュタットまで散策するのがおすすめです。入口の真向かい、タッシェンベルク通り沿いには、アウグスト強王が愛妾のために建てたバロック様式のタッシェンベルク宮殿(Taschenbergpalais)があり、現在はホテルになっています。
よくある質問
ドレスデン城がいちばん空いているのはいつですか?
週末は午前11時〜午後5時まで混雑し、開館後はほぼ一日中にぎわっています。週末に行くなら、午前10時の開館直後が狙い目です。週末の人混みを完全に避けたいなら、平日に訪れるとよいでしょう。
ドレスデン城は毎日開いていますか?
いいえ、火曜日は休館です。月曜日と水曜日〜日曜日は午前10時〜午後5時に開館しています。
「歴史的緑の丸天井」は事前予約が必要ですか?
できれば予約しておきましょう。入場は時間指定制で人数も限られており、人気の時間帯は特に週末に売り切れてしまいます。予約はドレスデン国立美術館(Staatliche Kunstsammlungen Dresden、SKD)の公式サイトから行えます。最新の料金も同サイトに掲載されています。
ドレスデン城の見学にはどのくらい時間がかかりますか?
緑の丸天井のどちらか一方に武器庫とトルコの間を加えるなら、2〜3時間を見ておきましょう。すべてのコレクションをじっくり見るなら丸一日かかります。
周辺にはほかに何がありますか?
ツヴィンガー宮殿、ゼンパーオーパー、旧宮廷教会、タッシェンベルク宮殿はいずれも城のすぐ隣です。アウグストゥス通り(Augustusstraße)には磁器の壁画「君主の行列」があり、聖母教会(フラウエン教会)やブリュールのテラスへも歩いて数分で行けます。
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