つづら折りの先にある寄り道
バジェ・エンカンタード(Valle Encantado)は、長い長い上り坂を登りきったあたりにあります。RP33はチコアナ(Chicoana)周辺の緑豊かなタバコ畑を抜けると、川に沿ってエスコイペ渓谷(Quebrada de Escoipe)を上っていきます。その先ではクエスタ・デル・オビスポ(Cuesta del Obispo)のヘアピンカーブを幾重にも折り返しながら高度を上げていきます。峠の手前で舗装路から標識付きの未舗装路へ下りると、ひっそりとした山あいのくぼ地に出ます。
このくぼ地こそが「魅惑の谷」と呼ばれる場所です。標高約3,000メートルの開けた高原には、風化して奇妙な形になった岩が点在しています。ところどころに草地が広がり、空がすぐそこにあるように感じられます。RP33を走る車の多くは、ピエドラ・デル・モリノやカチへ急ぐあまり、ここに目もくれず通り過ぎてしまいます。だからこそ、わざわざ寄り道する価値があるのです。
谷の風景
目に入るのは、ほとんどが岩と広々とした空間です。谷底からは赤みがかった岩や黄土色の岩がそびえています。浸食によって削られたその姿は、人の顔や動物に見立てられて親しまれています。岩のあいだには、たくましいアンデス高地の草や背の低い低木が生えています。雨のあとには水たまりができ、地面がしっとりとした緑に覆われます。
ここの魅力は、特定の見どころではなく、そのスケールの大きさにあります。聞こえるのは風の音ばかりで、岩のあいだをどの方向へも自由に歩いていけます。州内のこの一帯にはグアナコやコンドルが生息しているので、尾根に目を凝らしてみてください。ただし、必ず出会えるとは限りません。
RP33を上る
移動手段は車かツアー、あるいはレミース(ハイヤー)になります。このあたりには時刻表どおりに運行する交通機関がありません。サルタ市からの道のりは次のとおりです。
- 南へ向かい、セリージョス(Cerrillos)とエル・カリル(El Carril)を経てチコアナへ
- 西へ折れてエスコイペ渓谷に入る
- クエスタ・デル・オビスポのつづら折りを上る
- 上り坂の終わり近くにあるバジェ・エンカンタードの標識で脇道に入る
サルタからはおよそ2時間を見込んでください。クエスタに雲がかかっている日は、さらに時間がかかります。脇道は未舗装ですが、乾いた天候ならゆっくり走れば一般的な乗用車でも通れます。大雨のあとは、チコアナかホテルで道の状況を尋ねてから向かうようにしてください。
舗装路を外れたら
チケット売り場もビジターセンターもないので、マナーは訪れる人それぞれに委ねられています。ここで大切にしたい心がけは次のとおりです。
- 車は道から十分に離して停めましょう。 固い地面の上まで完全に寄せて停めれば、ほかの車や、ときおり通る地元の車の邪魔になりません。
- 草地には車で乗り入れず、歩いて入りましょう。 湿った谷底は傷つきやすく、この標高ではタイヤの跡が何年も消えません。
- 岩はそのままにしておきましょう。 石を積み上げたり、もろい岩に登ったりしないでください。
- ごみは一つ残らず持ち帰りましょう。 あてにできるごみ箱はありません。
- 高地ではゆっくり行動しましょう。 サルタの人々の多くは、高地対策にコカの葉を噛んだり(コケオ)、マテ・デ・コカを飲んだりします。コカの葉はサルタ市内の商店や市場で合法的に売られています。
ドライバーやガイドがマテを回してくれたら、器の中身を飲み干し、注いでくれた人に返すのが習わしです。「グラシアス(ありがとう)」と言うのは、もう十分というときだけにしてください。この言葉は「もう結構です」という意味になるからです。
谷がいちばん美しい季節
おおむね4月から11月の乾季は、空が最も澄みわたり、道も締まっています。この高さでは冬の朝がとても冷え込むため、サルタ市内が穏やかでも、しっかりした防寒着を一枚用意してください。赤い岩を照らす光がいちばん柔らかいのは、早朝と夕方です。
12月から3月の夏は雨季にあたります。クエスタ・デル・オビスポは雲に包まれることが多く、午後の嵐で未舗装路がぬかるむこともあります。その代わり、草地は緑が濃くなり、谷の水も豊かになります。天気が崩れる前の午前中に上るのがおすすめです。
ピエドラ・デル・モリノやカチと組み合わせて
バジェ・エンカンタードは、サルタからカチへ向かう定番のドライブコースにすんなり組み込めます。RP33をさらに数分上ると、標高約3,348メートルの峠ピエドラ・デル・モリノ(Piedra del Molino)に着きます。峠には小さな礼拝堂があり、地名の由来となった古い石臼も残っています。
峠を越えると、道はロス・カルドネス国立公園(Parque Nacional Los Cardones)に入ります。燭台のような巨大サボテンが林立するなかを、ティンティンの直線道路(Recta del Tin Tin)がまっすぐに貫いています。そこから道を下るとカチ(Cachi)に到着します。カルチャキ渓谷にある白壁の町で、広場や教会を眺めながらのんびり1時間ほど過ごす価値があります。
日帰りで戻る場合は、行きの上り道で谷に立ち寄ってください。体力に余裕がありますし、帰り道の光の具合は予測がつかないからです。
よくある質問
サルタからバジェ・エンカンタードへはどう行けばよいですか?
サルタ市から南へ向かい、セリージョス、エル・カリル、チコアナを通ります。そこからRP33でエスコイペ渓谷を上り、クエスタ・デル・オビスポを越えていきます。上り坂の終わり近くに案内標識のある未舗装路があるので、そこで脇道に入ってください。所要時間はおよそ2時間です。車かツアー、またはレミース(ハイヤー)を利用するのが現実的です。
一般的な乗用車でも谷まで行けますか?
晴れが続いていれば、未舗装の脇道をゆっくり進むことでたいてい問題なく行けます。ただし夏に大雨が降ったあとは、道がぬかるむことがあります。舗装路を外れる前に、チコアナの地元の人や宿泊先に道の状態を確認してください。
訪れるのに最適な時期はいつですか?
おおむね4月から11月の乾季は空が最も澄みわたり、路面も締まっています。冬の朝は厳しく冷え込みます。夏は草地が緑に色づきますが、クエスタ・デル・オビスポに雲がかかりやすく、午後には嵐になることもあるため、早い時間に出かけてください。
滞在時間はどのくらい見ておけばよいですか?
岩の造形のあいだを歩いて30~60分ほど過ごす人がほとんどです。ピエドラ・デル・モリノやロス・カルドネス国立公園と組み合わせて、サルタ~カチの日帰り旅行の途中で立ち寄るのが最適です。
高山病の心配はありますか?
谷の標高は約3,000メートルで、ピエドラ・デル・モリノはさらに高いため、息苦しさを感じることがあります。ゆっくり歩き、水分をしっかりとってください。コカの葉やマテ・デ・コカを口にする人も多く、どちらもサルタ市内で合法的に販売されています。
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