ジェノヴァの細い路地を進むと、突き当たりに石造りの塔が2本そびえています。その間に口を開けているのは尖頭アーチです。ヴィア・デル・カンポは配達用のバンがやっと通れるほどの幅しかなく、このアーチへまっすぐ続いています。門をくぐると、中世の街並みはそこでぷつりと途切れます。向こう側に広がるのは、港沿いの道路を行き交う車と、港の上に開けた空です。
この劇的な場面転換こそが、ここを訪れる理由です。丘の上に建つ双子の門、ポルタ・ソプラーナ(Porta Soprana)は有名ですが、ポルタ・デイ・ヴァッカはそれに比べてずっと注目度の低い存在です。その理由のひとつは立地でしょう。絵はがきに出てくるような広場ではなく、港で働く人々が行き交う旧市街の外れにひっそりと建っているのです。
皇帝に備えて築かれた門
この門は、1155年にジェノヴァが築いた城壁の一部です。当時、街はフリードリヒ・バルバロッサの攻撃を恐れていました。地元では今もこの城壁を「バルバロッサの城壁(Mura del Barbarossa)」と呼んでいます。城壁は急ピッチで築かれ、なかでも城門は最も守りの固い要所でした。
東からの道を守っていたのがポルタ・ソプラーナで、海沿いに西から近づく道を守っていたのがポルタ・デイ・ヴァッカです。両側の丸い塔、ひとつのアーチ、上部に並ぶ狭間胸壁という基本的な造りは、2つの門に共通しています。同じ日に両方を見れば、よく似た兄弟であることがひと目でわかります。
門はもともと、近くにあった教会にちなんで「サンタ・フェーデ門(Porta di Santa Fede)」と呼ばれていました。現在の名は、この門で通行税の徴収に関わっていたヴァッカ家に由来するというのが通説です。この名前は今も地元の道路標識や地図に記されています。
路地に溶け込む塔
まずはヴィア・デル・カンポの内側から塔を眺めてみてください。後の時代に建てられた家々が中世の石壁にぴたりと接しているため、塔は周りの連なる家並みから生えてきたかのように見えます。900年近く前の狭間胸壁からほんの数メートルのところに、鎧戸や洗濯物のロープが下がっています。
次にアーチをくぐって振り返りましょう。海側から見るこの眺めこそが定番の構図です。
- 2本の塔がすっきりと立ち並び、その間にアーチが収まる姿
- 背後の路地と比べたときの門の高さ
- カルッジ(旧市街の路地)と現代の港湾道路との落差
石に低い日差しが当たり、質感が浮かび上がる早朝か夕方がおすすめです。
ヴィア・デル・カンポと名曲
門の背後に延びる通りも、それ自体が有名です。ジェノヴァが生んだ偉大なシンガーソングライター、ファブリツィオ・デ・アンドレは、1967年のアルバムでこの通りの名を冠した曲を発表しました。この界隈で社会の片隅に生きる人々をたたえた歌です。多くのイタリア人にとって「ヴィア・デル・カンポ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、通りそのものよりもこの曲なのです。
通り沿いには、デ・アンドレのファンが残したメッセージやささやかな捧げものが見られます。Via del Campo 29 rossoには、彼とジェノヴァ派のシンガーソングライターたちをテーマにした小さなスペースがあります。開館時間は門とは異なるので、別途確認してください。通りを端から端まで歩いてアーチにたどり着くのが、いちばんの訪れ方です。
開いているのは日曜と月曜だけ
開館日が変則的なので注意が必要です。公表されている開館時間は日曜と月曜の午前9時〜午後5時で、火曜から土曜は休館とされています。この2日のどちらかに予定を入れ、明るさも時間も十分に残るよう、午後5時よりかなり早めに到着しましょう。
確認できるスケジュールはこの公表情報のみです。平日にジェノヴァに滞在する場合は、旧市街の散策を週末に回し、その途中でここに立ち寄るとよいでしょう。市内の歴史遺産は公開状況が変わることがあるため、出発の直前にもう一度確認してください。
港とプリンチペ駅からのアクセス
ミラノやリヴィエラ方面からの列車が発着する主要駅、ジェノヴァ・プリンチペ駅からは徒歩10分ほどです。海の方へ坂を下り、グラムシ通り(Via Gramsci)かプレ通り(Via Prè)を東へ進みます。港沿いの道路から塔が見えてきます。
地下鉄なら、旧ドックのそばにあるダルセナ(Darsena)駅で降り、ヴィア・デル・カンポ方面へ数分歩きます。ポルト・アンティコやジェノヴァ水族館(Acquario di Genova)からは、海沿いを北西へ10分ほど歩けば着きます。おすすめのルートは、フォッサテッロ広場(Piazza Fossatello)を起点にヴィア・デル・カンポを端から端まで下り、アーチを目指す道順です。
ジェノヴァの人々と一緒にカルッジを歩く
門の周辺は博物館のセットではなく、人々が暮らす生活の場です。地元に溶け込むためのポイントを紹介します。
- 道の片側に寄って歩きましょう。 ヴィア・デル・カンポは道幅が狭く、買い物袋を提げた住民やスクーターが優先です。写真は戸口に身を寄せて撮りましょう。
- 撮るのは石壁だけにしましょう。 戸口に腰掛けている人や店のカウンターにいる人は、写真に写ることを承諾していません。
- コーヒーは立ったまま注文しましょう。 近くのバールでは、たいていの人がカウンターでエスプレッソを飲みます。混んでいる店では、先にレジで支払いを済ませ、レシートを渡して注文する方式が一般的です。
- 名前は正しく発音しましょう。 地元の人は「ポルタ・デイ・ヴァッカ」と、「ポ」と「ヴァッ」を強く発音します。「ラ・ポルタ・デイ・ヴァッカ」と尋ねれば、道を教えてもらえます。
旧市街の西側は、デ・フェッラーリ広場(Piazza De Ferrari)周辺に比べるとやや雑然としています。日中は活気にあふれていますが、暗くなったら大通りを歩き、スマートフォンはポケットにしまっておきましょう。どこの港町でも心がけたい注意です。
アーチの先へ
この門は、旧市街の西側を巡る散策の途中に立ち寄ると一段と楽しめます。周辺の見どころは次のとおりです。
- コメンダ・ディ・サン・ジョヴァンニ・ディ・プレ(Commenda di San Giovanni di Prè):さらに西へ数分。十字軍ゆかりのロマネスク様式の教会で、巡礼者の宿泊所も兼ねていました
- プレ通り:小さな食料品店や屋台風の軽食カウンターが並ぶ、にぎやかで長い通り
- 王宮(Palazzo Reale):プリンチペ駅方面へ坂を上ったバルビ通り(Via Balbi)にあり、金箔で飾られた部屋やテラス庭園が見どころです
- ガラタ海洋博物館(Galata Museo del Mare):ダルセナのそばにあるジェノヴァの海洋博物館
- ポルタ・ソプラーナ:旧市街の反対側、ダンテ広場(Piazza Dante)近くに建つ双子の門。見比べたい方はぜひ
ヴィア・デル・カンポから門をくぐってコメンダへ向かい、ダルセナまで下る周遊ルートは、のんびり歩いて1〜2時間ほどです。
よくある質問
ポルタ・デイ・ヴァッカの開館時間は?
公表されている開館時間は日曜と月曜の午前9時〜午後5時です。火曜から土曜は休館とされているので、日曜か月曜に訪れる計画を立て、出発直前に最新情報を確認してください。
ポルタ・デイ・ヴァッカへの行き方は?
ジェノヴァ旧市街のヴィア・デル・カンポ西端にあります。ジェノヴァ・プリンチペ駅から徒歩10分ほど、地下鉄のダルセナ駅からは数分です。ポルト・アンティコや水族館からは、海沿いを北西へ歩いてください。
見学にはどのくらいの時間が必要ですか?
門だけなら20〜30分が目安です。ヴィア・デル・カンポ、プレ通り、コメンダ・ディ・サン・ジョヴァンニ・ディ・プレ、ダルセナも合わせて巡るなら、1〜2時間みておきましょう。
ファブリツィオ・デ・アンドレとはどんな関係がありますか?
門はヴィア・デル・カンポの突き当たりに建っています。この通りは、デ・アンドレが1967年のアルバムで曲名に用いた通りです。Via del Campo 29 rossoには、彼とジェノヴァのシンガーソングライターたちをテーマにした小さなスペースがあります。開館時間は別途確認してください。
ポルタ・ソプラーナとはどう違うのですか?
どちらも1155年に築かれたバルバロッサの城壁の門で、2本の塔の間にひとつのアーチを構える同じ造りです。ポルタ・ソプラーナが東からの道を守っていたのに対し、ポルタ・デイ・ヴァッカは海沿いに西から近づく道を守っていました。こちらは旧市街の外れ、港の働く人々が行き交う一角で、家々の間にひっそりと建っています。
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