イキトスのアルマス広場(Plaza de Armas)に立ったら、まわりから浮いている建物をひとつ探してみてください。漆喰や化粧塗り、タイル張りのファサードが並ぶなかに、ボルトの列で金属板をつなぎ合わせた建物がまじっています。それが「鉄の家」ことカサ・デ・フィエロ(Casa de Fierro)です。部材の状態で海を越え、さらにアマゾン川をさかのぼって運ばれてきた組み立て式の建物で、いまはヒロン・プトゥマヨの角に建っています。
広場は木々の陰に覆われ、そのまわりをモトタクシーがひっきりなしに走っています。観光客の多くは大聖堂を撮るだけで、鉄の家の前は素通りしてしまいます。この建物にいまも「穴場」らしい静けさが残っているのは、それが大きな理由です。
部材で届いた家
カサ・デ・フィエロが建てられたのは、19世紀後半のゴムブームの時代です。イキトスはゴムで潤い、ゴム王たちはその富をヨーロッパ風のステータスシンボルにつぎ込みました。そのひとつが、このプレハブの鉄の建物です。ヨーロッパで買い付けられ、パネルに分解されて大西洋を渡りました。そこからさらにアマゾン川をさかのぼり、いまも道路が一本も通じていない町へ運ばれたのです。
よく語られるのは、1889年のパリ万博で買われ、イキトスで組み立て直されたという話です。どのような経路だったにせよ、この建物は、ゴムが富をもたらしていた時代にこの河港へどれほどの金が流れ込んでいたかを物語っています。持ち主は周囲で手に入る材料で建てるより、家を丸ごと輸入するほうを選んだのですから。
エッフェルをめぐる謎
この建物が有名なのは、パリの塔を手がけた技師ギュスターヴ・エッフェルの名前があるからです。案内板やガイドブック、地元の人の話でも設計は彼の工房によるものとされ、それがこの建物の魅力の一部になっています。ただ、歴史家のあいだでは昔から議論が続いていることも知っておくとよいでしょう。
エッフェル本人とこの家を結びつける確かな記録はなく、同じ時代のほかのプレハブ鉄骨建築にも似たような話が伝わっています。
ですから、エッフェルとのつながりは確かな事実というより、この建物につきまとう伝説と考えておきましょう。いずれにしても、本当のおもしろさは別のところにあります。手早く組み立てられるように設計されたヨーロッパの工業製品が、ジャングルの川岸に建っているのです。それを間近で見ることこそ、ここを訪れる目的です。
鉄のファサードを読み解く
中に入る前に、外観をじっくり眺めてみてください。注目したいポイントは次のとおりです。
- パネル: 平らな鉄板が端と端を突き合わせてはめ込まれ、継ぎ目はむき出しのままです。
- ボルトの列: どの継ぎ目にも留め具がずらりと並んでいます。分解と再組み立てを前提に設計された建物であることが、いちばんよくわかる部分です。
- 2つの階: 通りと同じ高さの1階と、広場に面したバルコニーがぐるりと囲む2階からなります。
- 周囲との対比: 広場を囲む石や漆喰の建物と見比べてみてください。そして、アマゾンの暑さのなかで金属がどうなるかを想像してみましょう。
この最後の点は大切です。イキトスは一年中高温多湿で、この気候に金属の外壁はなんとも奇妙な選択です。この家は快適さのためではなく、富を見せつけるために買われたことがわかります。
鉄の家で食事を
現在、建物はレストランになっているため、内部を見るにはたいてい席について食事か飲み物を注文することになります。営業は今のところ月曜から土曜の11am〜10pmです。日曜は休みなので、週末に訪れるなら土曜日に行きましょう。
午前中に広場や川沿いを歩いたあと、そのまま昼食をとる流れが自然です。暑さのピークが過ぎた夕方早めの時間も悪くありません。メニューは変わることがあり、このガイドでは現在の料理や値段を確認できていません。席につく前に入口に掲示されたメニューを確かめ、博物館のような展示は期待しないでください。目当ては建物と広場の眺めだと割り切り、料理は料理として評価するのがよいでしょう。
席の取り方と支払い
建物は通りに向かって開かれているので、ふらりと立ち寄って席を頼むのがふつうです。次の点を押さえておくと安心です。
- 希望を伝える: 「ウナ・メサ・パラ・ドス」(2人です)と言えば案内してもらえます。バルコニー側がよければ、指をさして「アリーバ?」(上の階は?)と聞いてみましょう。
- 現金でソルを用意する: イキトス中心部では現金払いが一般的です。カードが使えると思い込まず、その日に使えるかどうかを注文前に確認しましょう。
- チップ: ペルーの着席式のレストランでは、サービス料が含まれていない場合、10パーセントほどを置いていく人が多いです。まずは伝票を確認してください。
- 写真: 広場からファサードを撮るのはいつでも問題ありません。店内は営業中のダイニングなので、ほかの客への配慮を忘れずに。
中心部に泊まっていれば、アクセスは簡単です。たいていのホテルからアルマス広場までは歩いてすぐです。離れた場所からはモトタクシーをつかまえて「プラサ・デ・アルマス、カサ・デ・フィエロ」と伝えましょう。メーターはないので、乗る前に料金を決めておいてください。
周辺の数ブロック
カサ・デ・フィエロは、わざわざこれだけを目当てに訪れるより、散策の出発点にするのがいちばんです。歩いて数分の範囲に、次のような見どころがあります。
- イグレシア・マトリス(Iglesia Matriz): 同じ広場に建つイキトスの大聖堂で、時計塔が目印です。
- タラパカ遊歩道(Malecón Tarapacá): 1ブロック先にある川沿いの遊歩道で、イタヤ川とアマゾンの氾濫原を見渡せます。
- タイル張りの邸宅: 遊歩道沿いとその周辺には、輸入されたアズレージョ(装飾タイル)で外壁を飾ったゴムブーム期の邸宅が残っています。どちらもブームの富で買われたものなので、鉄の家と見比べるとおもしろいでしょう。
- ベレン地区: 中心部の南にある市場街で、歩くと少し遠いですが、モトタクシーならすぐです。騒がしく人であふれていて、広場のような整然とした雰囲気はまったくありません。
鉄の家をあとにしたら遊歩道まで歩き、タイル張りのファサードをたどりながら南へ進んでみてください。ゆっくり歩いて1〜2時間ほどの道のりで、ゴムブーム期のイキトスの物語をひととおり味わえます。
広場を訪れるならこの時間に
一日のうちでもおすすめの時間帯は、朝と夕方のわずかなひとときです。朝は広場が木陰に包まれ、ファサードに光が当たります。夕方は涼しくなるので、金属細工をのんびり眺めるのにぴったりです。そのあとは、川が金色に染まるころに遊歩道へ足を延ばすとよいでしょう。
写真だけが目的なら、外観は日曜も含めていつ通りかかっても見られます。中に入りたい場合はレストランの営業時間に合わせ、日曜は避けてください。いずれにしても営業時間は変わることがあるので、出かける直前に確認しておきましょう。
よくある質問
カサ・デ・フィエロはイキトスのどこにありますか?
イキトス中心部のアルマス広場の角、Jirón Putumayo 182にあります。川沿いのタラパカ遊歩道(Malecón Tarapacá)までは1ブロックで、広場をはさんだ向かいには大聖堂のイグレシア・マトリス(Iglesia Matriz)が建っています。
カサ・デ・フィエロの中に入れますか?
現在、建物はレストランとして使われているため、中に入るにはふつう食事か飲み物を注文することになります。営業は今のところ月曜から土曜の11am〜10pmで、日曜は休みです。鉄のファサードは、広場からならいつでも見られます。
本当にギュスターヴ・エッフェルが設計したのですか?
エッフェルの作と広く伝えられており、地元でもそう語られています。ただし歴史家のあいだでは議論があり、エッフェル本人とこの家を結びつける確かな記録は見つかっていません。「ゴムブーム期に建てられた、エッフェル作と伝わるプレハブの鉄の建物」と考えておくのが無難でしょう。
見学にはどのくらい時間をみておけばよいですか?
外観とボルト留めの鉄板を見るだけなら、20分ほどで足ります。中で食事をするなら1時間以上をみておきましょう。遊歩道や近くに残るゴムブーム期のタイル張りの邸宅まで歩くなら、さらに1〜2時間ほど必要です。
どうやって行けばよいですか?
中心部のホテルに泊まっているなら、たいていアルマス広場まで歩いてすぐです。離れた場所からはモトタクシーを使い、「プラサ・デ・アルマス、カサ・デ・フィエロ」と伝えましょう。メーターはないので、乗る前に料金を決めておいてください。
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