城壁の内側にある地方の記憶庫
ラバティを訪れる人の多くは、金色に輝くモスクのドームと城壁を目当てに丘を登ります。城壁の内側にある博物館の建物まで足を運ぶ人はそれほど多くありませんが、素通りするのはもったいないことです。ここで紹介されているのは、ジョージアのなかでもトルコとアルメニアに接する高原の州、サムツヘ=ジャワヘティの歴史です。解説パネルに頼るのではなく、石や土器、金属の品々そのものがその物語を伝えてくれます。
立地も大きな魅力です。ラバティでは2010年代初めに大規模な修復が行われました。現在はポツホヴィ川を見下ろす丘の上に、淡い色の石造りの城壁や城塞、マドラサ、ミナレット、ドームをいただくアフメド・パシャ・モスクが並んでいます。博物館の収蔵品は、まさにこの風景のなかに置かれているわけです。展示室を出ると、いま見てきた解説に登場した建物がすぐ目の前に広がっています。
ジャケリ家とパシャたち:ひとつの丘に重なるふたつの帝国
この博物館でいちばん見ておきたいのがこのテーマです。アハルツィヘは、中世後期にサムツヘを治めたアタベグ、ジャケリ家の本拠地でした。16世紀からはオスマン帝国の支配下に入り、1828年にロシア軍に占領されるまでその状態が続きました。
丘の上の景観は、こうした歴史の積み重なりから生まれたものです。ジョージアの城塞都市はパシャの治める都となり、その後はロシアの駐屯地へと姿を変えました。支配者が替わるたびに、新しい建物が残されていったのです。博物館では、それらを時代順に読み解く手がかりが得られます。
先に館内を回っておけば、モスクもマドラサも城塞も、さまざまな様式の寄せ集めではなく、歴史の各章として理解できるようになります。
展示室の見どころ
収蔵品は、この地方の最初期の集落から始まり、おおむね時代順に並んでいます。特に注目したいのは次のような展示です。
- 考古学的な出土品:サムツヘやジャワヘティの高原各地で発掘された、青銅器時代以降の土器や金属器があります。
- 石の彫刻:州内の教会や集落に残っていたレリーフ、石碑、建築部材の断片が並びます。
- 中世の資料:サムツヘが半独立の公国だったジャケリ家時代の品々を見ることができます。
- オスマン帝国時代の品々:アハルツィヘがパシャリクだった数世紀の武具や日用品が展示されています。
- 民俗資料:この地域に暮らしてきたジョージア人やアルメニア人などの衣装や生活用品があります。
ジョージアの地方の博物館では、展示ラベルや翻訳が十分でないこともあります。出かける前に少し予習しておくか、スマートフォンに翻訳アプリを入れておくと役に立ちます。展示品は入れ替えや貸し出しがあるため、ここに挙げた内容はテーマの目安と考えてください。特定の品が必ず見られるとは限りません。
城と合わせた見学のタイミング
覚えておきたい決まりはひとつだけで、月曜日は避けることです。現在、博物館は月曜日が休館で、それ以外の日は午前10時〜午後6時に開いています。ジョージアの博物館は、季節や祝日によって開館時間が変わることがあります。旅行する週に、ラバティや博物館の公式情報を確認してください。
展示室の見学にかかる時間は1時間ほどです。じっくり読み込むなら90分を見ておきましょう。城壁やモスクの中庭、城塞を回るなら、さらに1〜2時間が必要です。疲れていないうちに博物館を見て、それから城壁に登るのがおすすめです。城壁から町と川を見渡す眺めは、締めくくりにぴったりです。
城そのものに比べると、博物館はまだあまり知られていません。ラバティには日帰り客が多く訪れますが、ツアー客の多くは写真映えする場所へ直行します。そのため、外の中庭がにぎわっていても、展示室は静かなことがよくあります。
ラバティの入場と敷地内の回り方
次の点を心がけると、見学がスムーズになります。
- チケットは敷地内で購入します。 ラバティには専用のチケット売り場があります。博物館の入場券は、城の敷地の入場券とは別売りの場合があります。料金はチケット売り場に掲示されているので、そこで確認してください。
- 写真を撮る前に確認します。 地方の博物館では館内撮影のルールがまちまちなので、係員に尋ねれば教えてもらえます。カメラを指して首をかしげて見せれば、言葉が通じなくても伝わります。
- ふたつの言葉を覚えておきます。 「ガマルジョバ」(こんにちは)と「マドロバ」(ありがとう)が言えるだけで、ぐっと打ち解けやすくなります。年配の係員は、英語よりロシア語のほうが通じやすいこともあります。
- モスクにふさわしい服装で行きます。 アフメド・パシャ・モスクまで足を延ばすなら、肩とひざを隠す服装が礼儀にかなっています。
- 城壁では足元に気をつけます。 修復された城壁には急な石段や凹凸のある場所があります。展示室を歩くとき以上に、滑りにくい靴が大切です。
博物館のジョージア語の名称には「ムゼウミ」という言葉が含まれていて、看板でも見分けやすくなっています。「ラバティの博物館」と尋ねれば、町の誰もが丘の上を指さして教えてくれるはずです。
アハルツィヘへのアクセス
アハルツィヘはサムツヘ=ジャワヘティの中心都市で、この地方を巡る拠点として最適です。トビリシのディドゥベ・バスターミナル(Didube)からマルシュルートカ(乗り合いのミニバス)が出ていて、所要時間は3〜4時間ほどです。多くの旅行者は、北東へ車で1時間足らずの距離にあるボルジョミを経由してやって来ます。
町なかでは、ラバティはポツホヴィ川の南岸の小高い場所にあります。中心部から歩いて行けますし、荷物があるなら近距離ですのでタクシーを使ってもよいでしょう。地図上の住所はJXRG+V9Vです。ただ、地図アプリに「ラバティ城(Rabati Castle)」と入力するほうがたいてい早く見つかります。
博物館を軸にした1日のプラン
博物館は、周辺を巡るルートのひとつに組み込むと楽しみが広がります。車があるか運転手を雇うなら、次の順番がおすすめです。
- 午前:サムツヘ=ジャワヘティ歴史博物館を見学し、続いてラバティの城壁とモスクを回ります。
- 午後:町から車で少し走った森の渓谷にある、サパラ修道院を訪ねます。ジャケリ家ゆかりのフレスコ画が残る教会があります。
- 翌日:ムトゥクヴァリ川の谷沿いに南へ1時間半ほどの場所にあるヴァルジアへ向かいます。タマル女王ゆかりの、12世紀の洞窟修道院です。
ヴァルジアやサパラの前に博物館を見ておけば、どちらについても政治的な背景がわかります。車で走っているのが誰の治めた土地なのか、フレスコ画を描かせたのが誰なのかを知ったうえで訪れることができます。
よくある質問
サムツヘ=ジャワヘティ歴史博物館は具体的にどこにありますか?
アハルツィヘにあるラバティ城の敷地内で、ポツホヴィ川を見下ろす小高い場所にあります。地図上の住所はJXRG+V9Vですが、「ラバティ城(Rabati Castle)」で検索するのがいちばん簡単です。
月曜日は開いていますか?
いいえ、開いていません。現在は月曜日が休館で、火曜日から日曜日の午前10時〜午後6時に開館しています。季節や祝日によって時間が変わることがあるので、出かける前に公式情報を確認してください。
見学にはどのくらいの時間が必要ですか?
展示室は1時間ほどが目安です。じっくり読み込むなら90分を見ておきましょう。城壁や城塞、アフメド・パシャ・モスクの中庭など、ラバティのほかの場所も回るなら、さらに1〜2時間が必要です。
トビリシからアハルツィヘへはどう行けばよいですか?
トビリシのディドゥベ・バスターミナルからマルシュルートカが出ていて、所要時間は3〜4時間ほどです。途中のボルジョミに立ち寄る旅行者も多くいます。ボルジョミからアハルツィヘまでは1時間かかりません。
近くにはほかにどんな見どころがありますか?
敷地内には、ラバティの城壁や城塞、モスクがあります。町から車で少し走ればサパラ修道院です。ヴァルジアの洞窟修道院は南へ1時間半ほどの距離にあり、アハルツィヘから気軽に日帰りで訪れることができます。
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