平らなアラザニ渓谷にぽつんとそびえる丘があり、かつての王都はいま、その頂だけに収まっています。頂上は城壁でぐるりと囲まれ、内側にはドームを戴くれんが造りの教会と、ずんぐりとした数階建ての塔が建っています。麓の道路沿いには小さな待避所があり、車が次々と入ってきます。そこから先はブドウ畑が広がり、渓谷の向こう側に大コーカサス山脈が見えます。
アッバース1世に滅ぼされた町
グレミは修道院ではなく、ひとつの国の都でした。15世紀半ばからはカヘティ王国の首都として栄えました。王宮のほか、市場や浴場もあり、ジョージア東部を通るシルクロード交易に沿って商人街が延びていました。
1615年、ペルシャのアッバース1世の軍勢に略奪されます。町はその後再建されることがなく、宮廷はテラヴィへ移りました。丘の周りの畑では考古学者が下町の跡をたどっていますが、現在歩いて見学できるのは頂上の城塞部分です。
坂を上る際には、ぜひこの歴史を思い浮かべてみてください。丘の麓に点在する石や低い壁は、かつてにぎわった町の名残です。そして生き残った丘の頂は、王権と信仰の中心だった場所なのです。
れんがとフレスコ画、そして王の墓
聖大天使教会は、カヘティのレヴァン王が1565年に建てたものです。古いジョージアの教会の多くは切り石で造られていますが、この教会には細長い焼成れんがが使われています。そのため外壁は温かみのある橙褐色の縞模様となり、カヘティ各地に見られる灰色の修道院とはまるで違う印象を受けます。
高いドラムの上にドームを載せた十字ドーム式の教会で、外側にはアーケードの回廊がめぐらされています。内部の壁を飾るのは、1577年に描かれたフレスコ画です。聖人たちや寄進者である王族の姿が壁一面に描かれ、色はあせているものの、ドーム下のほの暗い光の中でも十分に見分けられます。
レヴァン王自身もここに眠っています。この教会は王宮の礼拝堂であり、王朝の威信を示す存在でもありました。現在も教会として使われているので、イコンや燭台が並び、礼拝が行われていることもあります。
塔の博物館を上る
教会の隣に建つ塔は、もう一つの見どころです。グーグルの概要では鐘楼とされていますが、旧城塞の王の塔でもあります。現在は各階が小さな博物館になっています。
館内の見どころは次のとおりです。
- 下町の発掘調査で見つかった出土品
- カヘティ王家と1615年の破壊に関する資料
- 各階を結ぶ狭い階段(足元に注意しましょう)
- 渓谷の景色を切り取る上階の壁の開口部
博物館の規模は小さく、多くの人は20〜30分ほどで見終えます。真価は、歴史の背景がわかる点にあります。見学を終えると、丘の下に広がる何もない畑が、ただの農地ではなく失われた町並みに見えてくるはずです。
フレスコ画の下へ入る前に
ここは現役のジョージア正教会なので、一般的な決まりごとを守りましょう。
- 女性: 髪を覆い、膝下丈のスカートを着用します。ジョージアの教会では入口に参拝者用の巻き布やスカーフを用意していることが多いものの、自分のスカーフを持参すれば慌てずに済みます。
- 男性: 帽子を脱ぎます。半ズボンは避け、長ズボンを着用するのが基本です。
- 肩: 性別を問わず、肩は覆っておきましょう。
- 写真: 入口の掲示を確認してください。いずれにしても古いフレスコ画へのフラッシュ撮影は控えるべきです。祈っている人や礼拝の様子は決して撮影しないでください。
- ろうそく: 内部で細い蜜ろうのろうそくが売られています。地元の人はイコンの前にろうそくを灯し、しばらく静かにたたずみます。
堂内では小声で話し、イコノスタシスの前には立ち入らないようにしましょう。教会を守っている人に「ガマルジョバト(こんにちは)」「マドロバ(ありがとう)」とひと言かけるだけで、印象がぐっと良くなります。
塔の博物館は有料です。現在の料金はチケット売り場に掲示されています。カードが使えない場合に備えて、ジョージア・ラリの現金を少し持っておくと安心です。
テラヴィ・クヴァレリからグレミへのアクセス
グレミはテラヴィとクヴァレリを結ぶ幹線道路沿いにあるので、見逃す心配はありません。プラスコード「2M26+V32」で検索すれば、丘の麓にピンが立ちます。
- テラヴィから: 拠点にする人が最も多い町です。村々のブドウ畑を抜けて東へ少し走れば到着します。待ち時間込みでタクシーを往復で頼むのが手軽です。
- クヴァレリから: 同じ道路を西へ向かえば、テラヴィからよりさらに近い距離です。
- マルシュルートカ: テラヴィ〜クヴァレリ間のミニバスが前を通ります。運転手に「グレミで降ります」と伝えましょう。
- トビリシから: 車での長い日帰り旅となり、カヘティのほかの見どころと組み合わせるのが一般的です。
道路脇から小道と階段を上ると、城壁の門にたどり着きます。上りは短いものの急な箇所があり、石畳も凸凹しています。
訪れる時間帯と渓谷の眺め
現在の開館時間は毎日午前10時〜午後5時です。ジョージアのほかの文化遺産と同様、季節や宗教上の祝日によって変わることがあるため、夕方近くに訪れる予定なら事前に確認しておきましょう。
現在は午後5時に閉まるので、午前中か昼過ぎに訪れれば、教会と塔の両方をゆっくり見学できます。午前10時を少し過ぎたころに着けば、テラヴィ周遊の日帰りツアーのバンより先に入れることが多いのも利点です。
晴れた日には城壁から、アラザニ渓谷越しにコーカサスの山並みまで見渡せます。春は畑が緑に染まり、山頂には雪が残ります。秋はブドウの収穫期「ルトヴェリ」で、眼下のブドウ畑はにぎわい、地方全体がいちばん活気づく季節です。
カヘティ周遊にグレミを組み込む
グレミの見学にかかる時間は1時間〜1時間半ほどです。丸一日を費やす場所ではありませんが、旅程の軸となる立ち寄り先になります。同じ道路沿いのほかの名所とも組み合わせやすいでしょう。
- ネクレシ修道院: 車ですぐの森に覆われた山腹にあり、渓谷を振り返る眺めが楽しめます。
- クヴァレリ: 作家イリヤ・チャヴチャヴァゼの生家である記念博物館や、丘を掘り抜いたトンネルのワイナリーがあります。
- クヴァレリ湖: コーカサス山麓のほとりにあり、静かに食事を楽しめる立ち寄り先です。
- テラヴィ: 地方の中心都市で、後期カヘティ王家のバトニス・ツィヘ城塞があります。
ワインツアーに参加するなら、グレミを最初に訪れましょう。階段の上り下りも、薄暗い博物館の見学も、教会でのマナーも、試飲が始まる前のほうがずっと楽です。
よくある質問
グレミは正確にはどこにあり、どうやって行けばよいですか?
カヘティ地方クヴァレリ市のテラヴィ〜クヴァレリ街道のすぐ脇にあります(プラスコード:2M26+V32)。多くの人はテラヴィかクヴァレリからタクシーで訪れます。両町を結ぶミニバスも前を通るので、運転手に「グレミで降ります」と伝えれば停まってくれます。
開館時間を教えてください。
現在は毎日午前10時〜午後5時に開いています。ジョージアの文化遺産は季節や宗教上の祝日によって開館時間が変わることがあります。特に遅い時間に訪れる場合は、事前に確認してください。
グレミの見学にはどのくらい時間がかかりますか?
1〜1.5時間ほどみておきましょう。坂道の上り、1577年のフレスコ画が残る大天使教会、塔の博物館、城壁からの眺めまで一通り楽しめます。
服装の決まりはありますか?
あります。現役の正教会なので、女性は髪を覆い、膝下丈のスカートを着用します。男性は帽子を脱いで長ズボンをはきます。また、性別を問わず肩は覆いましょう。入口に巻き布が用意されていることも多いですが、念のため自分のスカーフを持参すると安心です。
グレミと組み合わせて訪れられる場所はありますか?
近くにネクレシ修道院があります。クヴァレリにはイリヤ・チャヴチャヴァゼ記念博物館やトンネルのワイナリー、クヴァレリ湖があり、テラヴィにはバトニス・ツィヘ城塞があります。ワインの試飲よりも先に、早めの時間にグレミを訪れるのがおすすめです。
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