正面の壁だけが残る教会
建っているのは壁が一枚きりで、その奥には何もありません。68段の石段の上に、彫刻を施した花崗岩のファサードが幾層にも重なってそびえています。ガラスのない窓の向こうに見えるのは身廊ではなく、空です。
ここはもともと、イエズス会が1602年から1640年にかけて建てた聖母教会(マードレ・デ・デウス教会)の正面部分でした。隣には聖パウロ学院が建っていて、東アジア初の西洋式大学といわれることもあります。1835年1月の火災で教会と学院は焼け落ち、焼け残ったのは石造りの正面だけでした。
いまではマカオと聞いて多くの人がまず思い浮かべる風景となっており、2005年にユネスコの世界遺産に登録された「マカオ歴史地区」の一部でもあります。ファサードと地下納骨堂だけなら45分ほど見ておけば十分です。隣の砦まで足を延ばすなら、2時間ほどとっておきましょう。
花崗岩の彫刻を一段ずつ読み解く
写真を撮る前に、まずは彫刻をじっくり眺めてみてください。ファサードの設計者は、イタリア人のイエズス会士カルロ・スピノラだと考えられています。彫ったのは日本から追放されたキリシタンと中国人の職人たちで、石には両方の伝統が刻まれています。
上から順に見ていきましょう。
- ペディメント(最上部の三角破風):聖霊を表すブロンズの鳩がいて、太陽や月、星がそれを囲んでいます。
- 鳩の下:幼子イエスの像があり、その横には磔刑に使われた道具が彫られています。
- 中央の段:天使に囲まれた聖母マリアが中心にいます。その両脇を飾るのは、中国を表す牡丹と日本を表す菊です。
- 一風変わった細部:ポルトガルの帆船や骸骨のほか、七つの頭を持つヒドラを聖母が踏みしめる姿もあります。キリスト教の図像のそばに漢字が添えられているので、探してみてください。
- 最下段:壁龕(へきがん)にはイエズス会の聖人たちのブロンズ像が並び、中央の扉口の上には「MATER DEI」の文字が刻まれています。
正面には朝のやわらかな光がまっすぐ当たるので、下の段の彫刻は早い時間ほど見やすくなります。
ファサードの裏側:地下納骨堂と博物館
中央の扉口をくぐると、そこはかつて教会が建っていた場所です。地面に残る低い基礎の壁が、昔の身廊の輪郭を描いています。奥にある金属製の階段を途中まで上ると、上部の窓から外をのぞくことができます。石段越しに旧市街を見下ろす眺めです。
階段を下りた先には、地下納骨堂と天主教芸術博物館があります。納骨堂では、日本人とベトナム人の殉教者の遺骨がガラス越しに安置されています。教会の創設者アレッサンドロ・ヴァリニャーノの墓所があるのもここです。博物館は小さく、展示室は一部屋だけです。マカオの教会や修道院に伝わる絵画、銀器、彫像が並んでいます。
大三巴街(Rua de São Paulo)を上って
最寄りの地下鉄駅はありません。ほとんどの人は、民政総署(旧レアル・セナド)の建物前に広がるセナド広場から歩き始めます。白と黒のモザイク模様の石畳が目印です。そこから案内表示に従って、聖ドミニコ教会の前を通りながら坂を10分ほど上ります。
最後の区間が大三巴街(Rua de São Paulo)です。細い通りには、アーモンドクッキーやエッグロール、甘い豚肉の干し肉(ポークジャーキー)を売る店が軒を連ねています。干し肉ははさみで切り分けてもらい、量り売りで買います。どの店も店員が入口に立って試食を配っているので、いくつか味見してから選べます。
通りを抜けると石段のふもとに出て、目の前にファサードの全景が広がります。コタイ・ストリップ方面から来る観光客も多く、セナド広場周辺まではタクシーか路線バスを使うのがいちばん簡単です。ただし、出発前に最新の路線を確認しておいてください。
開館時間について
ファサードは開放された広場に建っていて、石段も誰でも出入りできる広場になっています。地下納骨堂と博物館には開館時間があり、毎日午前9:00〜午後6:00です。定休日はありません。
中に入りたい場合は、午後6:00よりかなり前に着くようにしましょう。石段の上り下りや納骨堂、隣の砦の見学には、思った以上に時間がかかります。閉館後も石段に腰を下ろして、外からファサードを眺めることはできます。
人の少ない石段を楽しむには
広場はとても混み合います。日中はずっとセナド広場から団体ツアーが上ってきて、石段は写真の順番を待つ人でいっぱいになります。午前9:00の開館に合わせて着けばたいてい団体より先に入れますし、早朝なら石段がほとんど無人のことも珍しくありません。
気持ちよく見学するためのポイントをいくつか挙げておきます。
- 写真:石段の端に立ち、ファサードを斜め下から見上げるように撮りましょう。石段の中央にいる人混みがフレームに入りにくくなります。
- 地下納骨堂の中:声は控えめにしてください。殉教者の遺骨に祈りを捧げに訪れる人がいまもいます。
- 支払い:マカオの通貨はパタカです。大三巴街の店では香港ドルも広く使えますが、おつりはたいていパタカで返ってきます。
- 言葉:案内表示は中国語とポルトガル語です。天主堂跡はポルトガル語でRuínas de São Paulo、広東語ではDaam Sam Ba Paai Fong(大三巴牌坊)と呼ばれます。タクシーの運転手に伝えるときに役立ちます。
すぐ隣のモンテの砦と哪吒廟
帰りは来た道を戻る必要はありません。ファサードのすぐ左手には、天主堂跡の側面に寄り添うように小さな中国式の廟が建っています。これが哪吒廟(ナーチャ廟)で、その脇には旧市街の城壁の一部が残っています。イエズス会の教会の壁に道教の祠が寄り添う光景は、マカオという街をよく物語っています。
反対側からは、小道とエスカレーターでモンテの砦(大砲台)へ上れます。17世紀にイエズス会が築いた砦で、城壁にはいまも古い大砲がずらりと並んでいます。その下の丘の中に造られているのがマカオ博物館です。
城壁の上からは、ファサードを裏側から見下ろせます。壁がどれほど薄いか、建物のどれだけが失われたかがよくわかるはずです。ここから東へ歩いて聖ラザロ地区の石畳の路地に入れば、数分で植民地時代の家々が並ぶ静かな街並みにたどり着きます。
よくある質問
セナド広場から聖ポール天主堂跡へはどう行けばいいですか?
聖ドミニコ教会の前を通って坂を上り、案内表示に従って大三巴街(Rua de São Paulo)へ向かいます。アーモンドクッキーや干し肉の店が並ぶ通りで、抜けると石段のふもとに出ます。所要時間は徒歩10分ほどです。
開館時間を教えてください。
地下納骨堂と宗教博物館は毎日午前9:00〜午後6:00に開いていて、定休日はありません。ファサードと石段は開放された広場にあるので、閉館後も外から眺められます。
混雑を避けるならいつがよいですか?
早めの時間がおすすめです。午前9:00の開館ごろに着けば、日中にセナド広場から上ってくる団体ツアーよりたいてい先に見学できます。
見学にはどれくらい時間をみておけばいいですか?
ファサードと裏側からの眺め、地下納骨堂を見るなら45分ほどです。隣のモンテの砦とマカオ博物館も回るなら、2時間ほどとっておきましょう。
近くにはほかに何がありますか?
ファサードのすぐ隣に哪吒廟(ナーチャ廟)と旧城壁の一部があり、隣の丘の上にはモンテの砦とマカオ博物館があります。セナド広場までは坂を下って徒歩10分です。東へ少し歩けば、聖ラザロ地区の石畳の路地に出られます。
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