ブラ広場の屋根の向こうに夕日が沈むころ、淡いピンク色の石畳には、クッションを小脇に抱えた人々が集まり始めます。まず耳に届くのは、そのざわめきです。やがて姿を現すのが円形闘技場そのもので、淡い色の石灰岩が巨大な楕円を描いて幾重にも積み重なっています。その石段は、2000年近い歳月のあいだに磨かれてすっかり滑らかになりました。
これがアレーナ・ディ・ヴェローナ(Arena di Verona)です。イタリアを代表する夏の風物詩の季節には、屋根のないオペラハウスへと姿を変えます。
訪れる理由
1世紀に築かれたローマ時代の円形闘技場を、フルオーケストラと合唱の響きが満たします。これほどのオペラ体験ができる場所は、世界でもそう多くありません。醍醐味は何といってもそのスケールです。『アイーダ』では実物大の円柱が並び、出演者の行列が舞台を進むこともあります。歌声は基本的にマイクを通さずに夜空へと立ちのぼり、金箔の天井の代わりに星空が背景になります。
今回は第103回にあたり、夏の数か月にわたって複数の演目が交互に上演される構成でした。演目は『アイーダ』のほか、『トゥーランドット』『ナブッコ』『椿姫』でした。
アクセス
アレーナはヴェローナ旧市街の中心、ブラ広場に面して建っています。ヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅(Verona Porta Nuova)からは徒歩でおよそ15〜20分と気軽に歩ける距離で、歩行者専用の旧市街まで短時間バスに乗って行くこともできます。ヴェネツィア、ミラノ、ボローニャからは主要鉄道路線でそのまま乗り換えなしに立ち寄れるため、日中は観光を楽しみ、夜は公演を観るという日帰りプランも十分に組めます。
夜間は円形闘技場の周辺一帯が歩行者専用となるため、どの手段で町に着いても、最後は歩いて向かうことになります。
場内の様子
座席は、グラディナータと呼ばれる番号付きの石段席から、ステージに近い指定の椅子席までさまざまです。石段席ではクッションを借りるのが習わしで、それでも眺めは驚くほど良好です。公演はもともと長時間の構成で、休憩を挟んだ全幕上演なら3時間を優に超えることも珍しくありません。暗い空を背景にした舞台照明が演出の要となるため、開演は日がしっかり暮れてからになります。
夏でも羽織るものが一枚あると重宝します。石は昼間の熱を蓄えていますが、すり鉢状の野外空間では、日が完全に沈むと夜気が急に冷え込むためです。上段の席はステージをはるか下に見下ろす位置にあるので、そうした席に座る人にとって双眼鏡は持っていく価値があります。
おすすめの時期
フェスティバルは6月から9月中旬まで続くため、夏の初めにも終わりにもそれぞれの魅力があります。シーズン序盤は開演前の日照時間が長く、夜も暖かめです。9月に入ると夜は涼しくなり、観光のピークである7〜8月に比べると、ヴェローナ全体の人出もやや落ち着く傾向があります。2026年の第103回は会期を通じて日ごとに演目が入れ替わり、各演目にそれぞれの上演日が設けられていました。
地元流の楽しみ方
常連の観客は番号なしの石段席を選び、クッションを持参するか入口で借ります。むき出しの石の見た目から想像するよりずっと快適に数時間を過ごせますし、ヴェローナの人々は代々こうしてここでオペラを楽しんできました。開場はたいてい開演の2時間ほど前です。石段席は一気に埋まるわけではなく少しずつ埋まっていくため、地元の人々は慌てて入場したりしません。その時間を使って、ブラ広場を囲むトラットリアで開演前の軽い食事を済ませます。
チケットや周辺のレストランの支払いは、イタリアで一般的なカードまたは現金で、オペラならではの決まりは特にありません。覚えておきたいマナーは、照明が落ちる前に席に着いておくことと、開演後はフラッシュ撮影が禁止になることです。初めて訪れる人がいちばん甘く見がちなのは、夜の冷え込みと公演の長さです。
チケットとスケジュール
アレーナのオペラはシーズンを通じて日ごとに演目が入れ替わり、チケットのカテゴリーや開演時刻、料金は年によって変わります。第103回では、『アイーダ』『トゥーランドット』『ナブッコ』『椿姫』の4演目が6月12日から9月12日までの会期に割り振られ、それぞれに上演日がありました。座席は、番号なしの石段席からステージ近くの指定椅子席まで販売されていました。
よくある質問
2026年のフェスティバルの会期はいつからいつまででしたか?
第103回の会期は2026年6月12日〜9月12日で、期間中は複数のオペラが日替わりで上演される構成でした。
駅からアレーナへはどう行けばよいですか?
ヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅から、アレーナのあるブラ広場までは徒歩で約15〜20分です。歩行者専用の中心部まで、市内バスで短時間移動することもできます。
公演1回の上演時間はどのくらいですか?
『アイーダ』や『トゥーランドット』のような全幕上演は、休憩を含めて3時間以上になるのが一般的で、終演は遅い時間になります。
石段席には何を持っていけばよいですか?
番号なしの石段席ではクッションが定番で、会場で借りることもできます。夏でも日没後は冷え込むため、夜には薄手の上着があると安心です。
詳しいプログラムとチケットの購入先は?
第103回のチケットは、アレーナ・ディ・ヴェローナ独自のフェスティバル用チケット窓口で、石段席から指定椅子席までのカテゴリーに分けて販売されていました。『アイーダ』『トゥーランドット』『ナブッコ』『椿姫』が日替わりで上演される構成でした。
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