水辺にそびえる黒い石壁
カイザースヴェルト皇帝居城跡を訪れて最初に目に飛び込んでくるのは、大きな石の壁です。黒っぽい玄武岩の石柱が横向きに積み込まれていて、壁に並んだ六角形の断面が、まるで石でできた蜂の巣のように見えます。壁はライン川の堤防ぎりぎりまで続いています。すぐそばを貨物船が行き交い、船体に書かれた船名まで読み取れるほどです。
屋根はなく、広間が復元されているわけでもありません。残っているのは崩れた外郭だけです。分厚い壁があり、途中で途切れた階段が宙へ向かって延びています。窓の跡からは、ライン川と、対岸に広がる平らな緑の牧草地が見渡せます。城の遺構と川の眺め、そしてのどかな田園風景。編集部のこのひと言が、この場所の魅力をよく言い表しています。
九百年の歴史が刻まれた城跡
この土地の歩みは、地名そのものに表れています。「ヴェルト(Werth)」とは川の中洲のことで、カイザースヴェルトももとは中洲でした。700年ごろ、聖スイトベルトがここに修道院を開きます。その後ライン川の流れが変わり、中洲は東岸と陸続きになりました。
1062年、この島は名高い誘拐事件の舞台となります。ケルン大司教アンノ2世が幼い国王ハインリヒ4世を船におびき寄せて連れ去り、帝国の実権を手にしたのです。歴史家はこの事件を「カイザースヴェルトのクーデター」と呼んでいます。
現在見られる遺構のほとんどは、12世紀後半にフリードリヒ・バルバロッサ(赤髭王)が再建したものです。彼はこの地を要塞化された皇帝居城にし、ライン川の関所としても使いました。石積みには、彼の名を刻んだラテン語の碑文がいまも残っています。居城が最終的に姿を消したのは1702年のことです。スペイン継承戦争のさなかに包囲され、爆破されました。
カイザースヴェルトへの行き方
いちばん手軽なのはU79です。デュッセルドルフ中心部では地下を走り、中央駅(Hauptbahnhof)とハインリッヒ・ハイネ・アレー(Heinrich-Heine-Allee)に停車します。その後は地上に出て北へ向かいます。
- 降車駅: クレメンス広場(Klemensplatz)かカイザースヴェルト(Kaiserswerth)。どちらで降りても旧市街まで歩いてすぐです
- 所要時間: 市中心部からおよそ30分
- 駅からの歩き方: 旧市街を西へ抜けて川のほうへ進み、ブルクアレー(Burgallee)をたどると城跡に着きます
- 自転車の場合: ライン川沿いのサイクリングロードがすぐ横を通っています。旧市街(アルトシュタット)からなら、ほぼずっと川沿いを走れます
車でも行けます。ただ、カイザースヴェルトの路地は狭く、天気のよい週末には川沿いの駐車場がすぐ埋まってしまいます。
足元に気をつけて城壁を歩くコツ
ここは博物館ではなく遺跡です。管理のされ方もそれに合わせたものになっています。石畳はでこぼこで、段差の高さもまちまちです。手すりもほとんどありません。滑りにくい靴で出かけましょう。特に雨上がりは、すり減った玄武岩が滑りやすくなるので注意が必要です。
- 段差のある場所や高い位置にある窓の跡の近くでは、小さなお子さんの手をしっかり握っていてください。
- 案内板はほとんどがドイツ語です。「Pfalz」は宮殿、「Burg」は城という意味で、この二つを覚えておけばだいたい用が足ります。
- 崩れかけた石積みや壁の上には登らないのが決まりです。指定された通路を歩きましょう。
- 軽食を持ってくる人も多いですが、食べるのは城跡の中ではなく、外に広がるライン川沿いの草地です。
- 周辺のカフェやパン屋では、現金のほうが喜ばれることがよくあります。カードを使える店も増えてはいますが、ユーロの現金も持っておくと安心です。
城跡を囲む古い街並み
カイザースヴェルトの旧市街にも、城跡に負けないくらいの見ごたえがあります。カイザースヴェルト・マルクト広場(Kaiserswerther Markt)は細長い広場で、並木の両側に歴史ある家々が軒を連ね、川に向かって延びています。
- 聖スイトベルトゥス・バシリカ(Basilica of St. Suitbertus): ロマネスク様式とゴシック様式が混ざり合った教会です。修道院を開いた聖スイトベルトの、金色に輝く聖遺物箱が納められています。
- カイザースヴェルト・ディアコニー(Kaiserswerther Diakonie): 1836年、テオドール・フリードナーがここに女性奉仕者(ディアコニッセ)の養成施設を開きました。クリミア戦争の前、1850年と1851年に、フローレンス・ナイチンゲールもここで研修を受けています。
- ライン川の渡し船: 車と自転車を運ぶ小さな渡し船が、対岸のメーアブッシュ市ランクスト(Langst)まで行き来しています。乗っている時間は短いものの、川に面した城壁を振り返って眺めるには、ここがいちばんの特等席です。
城跡からマルクト広場、バシリカ、川辺へと一周すれば、のんびり歩いて半日ほどです。
訪れるのにおすすめの時間帯
城跡はいつも多くの人でにぎわっています。暖かくなると、ライン川の遊歩道は家族連れやサイクリストであふれます。週末の散策客を避けるなら、平日の朝、午前10時の開場から間もない時間帯が狙い目です。午後の散歩客が川辺に集まってくる前に着いておけば、写真も撮りやすくなります。
夏なら夕方もおすすめです。低く傾いた日差しが黒い石壁を暖かな色に染めますし、午後6時の閉場までにはまだ時間があります。季節によって開場状況が変わるので、晩秋から早春にかけて訪れる場合は、市の公式サイトで開いているかどうかを確かめてください。冬でも、川に面した城壁なら堤防から眺められます。
よくある質問
デュッセルドルフ中心部からカイザースヴェルト皇帝居城跡へはどう行けばよいですか?
中央駅(Hauptbahnhof)かハインリッヒ・ハイネ・アレー(Heinrich-Heine-Allee)から、デュースブルク方面行きのシュタットバーンU79に乗ってください。クレメンス広場(Klemensplatz)またはカイザースヴェルト(Kaiserswerth)で降りれば、所要時間は30分ほどです。駅からは旧市街を西へ抜けて川沿いに出て、ブルクアレー(Burgallee)を進みます。
開場時間を教えてください。
Googleの情報では、曜日を問わず毎日午前10時から午後6時までです。ただし開場状況が季節によって変わる施設なので、寒い時期に訪れる場合はデュッセルドルフ市の公式サイトで事前に確認してください。
見学にはどのくらい時間がかかりますか?
城跡だけなら1時間ほどで十分です。カイザースヴェルト・マルクト広場や聖スイトベルトゥス・バシリカにも立ち寄り、ライン川沿いを散歩するなら、半日あればゆったり楽しめます。
子ども連れや、足の不自由な人でも楽しめますか?
城跡の中をよじ登って遊べるので、たいていの子どもは大喜びします。ただ、足元がでこぼこしているうえに段差もふぞろいで、手すりもほとんどありません。小さなお子さんからは目を離さないでください。城跡の内部は車いすでの移動が難しいところが多いものの、外の川沿いの遊歩道は平坦です。
周辺にはほかにどんな見どころがありますか?
聖スイトベルトの聖遺物箱を納めた聖スイトベルトゥス・バシリカがあります。歴史ある街並みのカイザースヴェルト・マルクト広場や、フローレンス・ナイチンゲールが研修を受けたカイザースヴェルト・ディアコニーも近くです。対岸のメーアブッシュ市ランクスト(Langst)へ渡る、ライン川の小さな渡し船もあります。
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