石畳の中央には、黒っぽいブロンズの騎馬像が立っています。その奥にそびえているのは、階段状の破風とほっそりした塔をもつ市庁舎です。ヤン・ヴェレム像と市庁舎(ラートハウス)。この二つがそろった場所がマルクト広場で、400年以上にわたってデュッセルドルフの「表玄関」として市民生活の中心であり続けてきました。
広場は旧市街(アルトシュタット)の西の端にあります。ライン川へは一区画ほど歩くだけで、反対側に数歩進むと酒場の並ぶ通りが始まります。立ち止まらずに通り過ぎてしまう旅行者も少なくありません。でも、ここはぜひ足を止めてみてください。
市庁舎と馬上の人物
まずは市庁舎に注目しましょう。いちばん古い棟が建てられたのは1570年代の初めです。八角形の階段塔をもつルネサンス建築で、今も広場全体の雰囲気を決めています。その後、何世紀もかけて新しい棟が増築されてきました。これらの棟がまるで舞台の書き割りのように、マルクト広場の一辺をふさいでいます。
とはいえ、本当の主役は市庁舎前の騎馬像です。モデルはプファルツ選帝侯ヨハン・ヴィルヘルム2世で、地元では誰もが「ヤン・ヴェレム」と呼んでいます。18世紀初めにガブリエル・デ・グルペロが鋳造したもので、アルプス以北のバロック様式の騎馬像のなかでも屈指の傑作とされています。
台座のまわりをぐるりと一周してみてください。馬が振り上げた前脚も、選帝侯のなびくかつらも、見る方向によって印象ががらりと変わります。定番の写真が撮れるのは市庁舎の階段からです。向かいに並ぶ破風屋根の家々を背景に、騎馬像がきれいに収まります。
銀のスプーンの伝説
地元のガイドが必ず話してくれる逸話があります。像を鋳造している途中で、ブロンズが足りなくなってしまいました。それを知った町の人々が、自分たちの銀のスプーンや食器を溶けた金属に投げ入れて鋳造を救った、という話です。
歴史家はこれを史実とはみておらず、あくまで伝説として扱っています。それでもこの話からは、広場にまつわる確かな事実が見えてきます。デュッセルドルフの人々は昔から、ヤン・ヴェレムを宮廷だけのものではなく、自分たちのものだと感じてきました。ヤン・ヴェレムがデュッセルドルフを拠点に統治したのは、宮廷建築と芸術の保護が盛んだった時代です。町はその功績を今もたたえ続けています。
カーニバルはここから始まる
マルクト広場には、毎年決まって出番が回ってくる日があります。11月11日午前11時11分、市庁舎の前でデュッセルドルフのカーニバルの道化役「ホッペディッツ」が目を覚まし、カーニバルのシーズンが正式に幕を開けるのです。この日は仮装した人々で石畳が埋め尽くされます。
シーズンが終わる灰の水曜日には、このホッペディッツが儀式として「埋葬」されます。その間、大パレードが行われる月曜日「ローゼンモンターク」の前後には、旧市街が大勢の人でふくれ上がります。これらの日に滞在しているなら、ぜひこの広場を訪れてください。町のカーニバル気質を最も濃く味わえる場所です。
冬の石畳
11月下旬になると、広場はデュッセルドルフのクリスマスマーケットの会場の一つに変わります。騎馬像と市庁舎の間には木造の屋台がぎっしり並び、市庁舎が全体の背景を飾ります。ライン地方のマーケットでおなじみの品々がそろっています。
- グリューワイン(マグはデポジット制です。代金に上乗せして支払った預かり金は、マグを返すと戻ってきます)
- ライベクーヘン(揚げたジャガイモのパンケーキで、アップルソースを添えて食べます)
- ブラートヴルストとローストナッツ
- 手作りのオーナメントやギフト
広場自体は24時間開いていますが、マーケットは季節ごとに独自の日程で開かれます。夜の予定を立てる前に、市の公式クリスマスマーケットのページで今年の開催日と屋台の営業時間を確かめておきましょう。
地元っ子流の広場の楽しみ方
門もなければ入場券もありません。公共の空間なので、真夜中でも夜明けでも通り抜けられます。地元の人らしく見えるかどうかは、広場のまわりでどう振る舞うかにかかっています。
- 「ビール」ではなく「アルトビア」を頼みましょう。 地元の黒っぽい上面発酵ビールで、「シュタンゲ」と呼ばれる小ぶりでまっすぐなグラスで出てきます。フュクシェン、シュリュッセル、シューマッハー、ユーリゲといった醸造所直営の酒場は、どれも歩いて行ける距離にあります。
- 給仕は「ケーベス」に任せましょう。 老舗の醸造所酒場で働く青いエプロン姿の給仕たちは、グラスが空になると何も聞かずに満杯のグラスと取り替えてくれます。もう十分なら、コースターをグラスの上に載せてください。
- ケルシュは頼まないこと。 ケルンとのライバル関係はたいてい冗談まじりのものです。それでも、デュッセルドルフでケルンのビールを注文すると冷ややかな視線を浴びます。
- 石畳には気をつけて。 でこぼこしているうえ、濡れると滑りやすくなります。車輪のついたものを押しているときやヒールを履いているときは特に注意してください。
人混みを避けて写真を撮るなら、旧市街のレストランが開く前の平日の朝がおすすめで、たいてい午後より空いています。日が暮れると広場はライトアップされます。日帰り客が引いてからのほうが、市庁舎のファサードもじっくり眺められます。
アクセスと周辺の散策
最寄りの地下鉄駅はハインリヒ・ハイネ・アレー駅で、U70やU74からU79など、複数の地下鉄路線が乗り入れています。駅からは旧市街の路地を数分歩けば広場に着きます。デュッセルドルフ中央駅(Düsseldorf Hauptbahnhof)からは、地下鉄でハインリヒ・ハイネ・アレー駅へ向かいましょう。歩くと約25分かかります。
この広場は、旧市街を歩いて巡るときの起点にぴったりです。徒歩数分の範囲に、次のような見どころがあります。
- ブルク広場(Burgplatz)と城の塔(シュロストゥルム):川のすぐそばに、かつての宮殿で唯一残った塔が立っています
- ライン河岸プロムナード(Rheinuferpromenade):ライン川沿いの散歩が楽しめる遊歩道です
- 聖ランベルトゥス教会(St. Lambertus):ねじれた尖塔で有名な教会です
- ボルカー通り(Bolkerstraße):酒場の並ぶ通りで、ハインリヒ・ハイネの生家もあります
マルクト広場からブルク広場を経て川へ出て、遊歩道を南へ歩いたら、路地を抜けて戻ってアルトビアを一杯。これが無理のない周遊ルートです。
広場がいちばん輝く季節
広場は季節ごとに異なる役割を担います。夏にはカフェのテーブルが並び、近くの川辺で長い夜を過ごせます。11月下旬から12月まではクリスマスマーケットの季節です。カーニバルの時期には、町いちばんのお祭り会場になります。
普段の日なら、ここで過ごすのは30分もかかりません。それでも、ゆっくり過ごす価値のある広場です。市庁舎の階段に腰を下ろし、ヤン・ヴェレム像を見上げながら、旧市街の人の流れに身を任せてみてください。
よくある質問
デュッセルドルフのマルクト広場へはどう行けばよいですか?
地下鉄でハインリヒ・ハイネ・アレー駅まで行き、旧市街を数分歩けば到着します。同駅にはU70やU74–U79などの路線が乗り入れています。中央駅からは地下鉄ですぐですし、歩いても約25分です。
マルクト広場には夜も入れますか?
はい、入れます。公共の広場なので、時間を問わず出入りできます。ただし、クリスマスマーケットのような季節行事には独自の開催日程があります。日程や時間は市の公式ページで確認してください。
マルクト広場の見学にはどのくらい時間をみればよいですか?
市庁舎のファサードとヤン・ヴェレム像を見るだけなら、20–30分で十分です。ブルク広場やライン河岸の遊歩道を歩き、旧市街でアルトビアも飲むなら、もっと長めに時間をとってください。
マルクト広場でカーニバルのシーズンが始まるのはいつですか?
11月11日午前11時11分です。この時刻に、市庁舎の前でホッペディッツが「目覚め」ます。シーズンは灰の水曜日に終わり、その日にホッペディッツを「埋葬」する儀式が行われます。
マルクト広場の近くに見どころはありますか?
城の塔(シュロストゥルム)が残るブルク広場があります。ほかに、ライン河岸の遊歩道、ねじれた尖塔で知られる聖ランベルトゥス教会、ボルカー通りもおすすめです。ボルカー通りにはハインリヒ・ハイネの生家があり、アルトビアの酒場も何軒か並んでいます。
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