ごく普通の通りから一本入ると、まず足元の舗装が変わります。コンクリートに代わって現れるのは、木目調の滑らかなタイル。そして気づけば、両側の建物がぐっと迫るように近づき、どの窓にも「木虫籠(きむすこ)」と呼ばれる黒々とした木格子が張り巡らされています。
ここが、金沢最大の茶屋建築保存地区、ひがし茶屋街です。江戸時代のお茶屋が軒を連ねるこの数区画では、かつて芸妓たちがこの格子の奥で裕福な客をもてなしていました。そして今も、その伝統を受け継ぐ茶屋がいくつか残っています。
ひがし茶屋街が特別な理由
1945年、日本の歴史ある城下町の多くが空襲で焼け野原となりましたが、金沢はその惨禍を免れました。この歴史の偶然こそが、この街並みがほぼ手つかずのまま現代に残る理由です。
現存する二階建てのお茶屋の多くは1820年代に建てられたもので、この時代に幕府がこの一帯を公認の花街として正式に定めました。メイン通りの「ひがし山ちゃ屋街」を歩けば、そこにあるのは復元建築ではなく、本物の街並みそのものです。
ここで実際に見られること、できること
見どころの主役は建築そのものですが、2〜3時間を過ごすには十分なコンテンツが揃っています。
- 志摩(しま)・懐華樓(かいかろう) — 一般公開されている元お茶屋2軒。畳敷きの座敷、朱塗りの階段、芸妓が使った楽器などを間近に見学できます
- 金箔店 — 日本の金箔生産のほぼすべてを担うのが金沢です。メイン通り沿いの店では、金箔をあしらったソフトクリームや日本酒、化粧品が売られています
- 箔座ひかり蔵 — 金箔を貼り詰めた驚くほど豪華な部屋に、実際に入ることができる金箔専門店です
- 金沢漆器や工芸品の小さな店 — メイン通りから枝分かれする路地に点在しています
じっくり座って眺めたいなら、2軒の茶屋建築資料館だけで1時間ほど見ておくとよいでしょう。単に入口から覗くだけでは物足りません。
アクセス
金沢駅からは、金沢周遊バスまたは橋場町行きの市内バスに乗ります。そこから天神橋を渡って浅野川を越え、徒歩約5分でひがし茶屋街に到着します。
駅からタクシーを使えば料金は少し上がりますが、バスの時刻を気にする手間が省けます。どちらの方法でも、川を渡る道中はぜひゆっくり味わってください。柳の枝が水面に垂れ、街の屋根並みが一度にではなく徐々に視界に現れてきます。
訪れるベストなタイミング
この街並みは屋外にあり入場券も不要なため、理屈の上では24時間365日いつでも訪れることができます。とはいえ、時間帯によって様子はまったく違います。
人通りのデータを見ると、平日・週末を問わず午前7時から午後11時までは比較的落ち着いています。一方、週末の午前10時から午後6時にかけては、観光バスや日帰り客がメイン通りに肩が触れ合うほど押し寄せる時間帯です。誰もいない木格子の通りの写真を撮りたいなら、この時間帯は完全に避けてください。
早朝、特に午前9時より前は、黒い木の外壁に柔らかな光が差し込み、人もほとんど見当たりません。夕方、店が閉まった後の時間帯には、同じ通りがしっとりと静かな表情を見せてくれます。いくつかの茶屋の軒先には灯りがともり始めます。
地元の人のように訪れるコツ
ひがし茶屋街には団体ツアー客が多く押し寄せるため、人混みを避けて計画を立てることが大切です。ここは知る人ぞ知る隠れスポットではありません。金沢屈指の人気観光地であり、週末の午後にはメイン通りにもその混雑ぶりがはっきりと表れます。
- タイミングを選ぶ:早朝または店じまい後に訪れれば、通りをほぼ独り占めできます
- 小さな店では現金を用意する:金箔店や工芸品店の多くは現金対応ですが、カードが使えない店も少なくないため、円を持ち歩きましょう
- 許可なく個人宅や営業中の茶屋の内部を撮影しない:この一帯のお茶屋の多くは、今も人が暮らしていたり実際に営業していたりする建物であり、野外博物館ではありません
- 団体ツアーの混雑を避ける:人だかりに出くわしたら、ひがし山ちゃ屋街から一本奥に入った路地へ足を延ばしてみましょう。建築の趣は変わらないまま、人出はぐっと少なくなります
- 夜の芸妓の芸を見たいなら事前予約を:席数が限られているうえ、特定の茶屋を通じた予約制です。飛び込みでの鑑賞はできません
ひがし茶屋街の賑わいから少し離れて同じような風情をもう一度味わいたいなら、対岸にある主計町(かずえまち)まで足を延ばしてみるのもおすすめです。規模は小さく、落ち着いた雰囲気の茶屋街です。
よくある質問
金沢駅からひがし茶屋街へはどう行けばいいですか?
金沢周遊バスまたは橋場町行きの市内バスに乗り、そこから浅野川を渡って徒歩約5分です。タクシーなら10〜15分ほどで到着します。
ひがし茶屋街の入場料はかかりますか?
かかりません。公共の街路エリアなので、24時間無料で通行できます。志摩(しま)や懐華樓(かいかろう)など個々の見どころは、内部見学に少額の入館料が必要です。
最も空いている時間帯はいつですか?
平日・週末ともに午前7時から午後11時までは人通りが落ち着いています。最も人が少ない通りを狙うなら午前7時ごろがベストです。週末の午前10時〜午後6時は最も混雑する時間帯なので避けましょう。
滞在時間の目安はどれくらいですか?
メイン通りの散策、茶屋建築の資料館1〜2軒の見学、金箔店での立ち寄りを含めて2〜3時間が目安です。主計町(かずえまち)地区まで足を延ばす場合は、さらに20〜30分見ておきましょう。
本物の芸妓の芸を見ることはできますか?
今も芸を披露している茶屋がいくつか残っていますが、基本的には予約制で席数も限られています。飛び込みでの鑑賞は難しいため、事前に手配しておく必要があります。
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