海の女神がいるとは、ジョセフ・ロード(Joseph Road)を歩いていてもなかなか想像できません。フッツクレーの中でもマリビルノング川(Maribyrnong River)に近いこの通りでは、かつての工業用地に次々とマンションが建てられています。ところが20番地まで来ると、景色は一変します。あたりは赤と金に染まり、前庭からは線香の煙が立ちのぼっています。そこでは中国寺院の日常が営まれているのです。
ここが天后宮です。船乗りや漁師の守り神として神格化された媽祖を祀る寺院で、今も現役の祈りの場として使われています。媽祖は中国南部の沿岸地域や、世界各地の華人社会で篤く信仰されてきました。訪れた人からの評価は常に高いものの、まだそれほど知られていません。フォーの街としてフッツクレーを知るメルボルンっ子でも、中に入ったことがある人はごくわずかです。
天后とはどんな女神か
媽祖にはさまざまな呼び名があります。標準中国語では「天后」と呼ばれ、英語名の「Heavenly Queen(天の女王)」もこの呼び名から来ています。言い伝えによると、媽祖はもともと福建の若い女性で、海で遭難した人々を救ったといいます。亡くなったあとは女神として祀られるようになり、漁村の人々は海へ出る前に彼女に祈りを捧げてきました。
この場所に寺院が建っているのも、そう考えればうなずけます。フッツクレーは河港を中心に発展した街で、この地域には海を渡ってオーストラリアへやって来た家族も少なくありません。航海の安全を守る女神の寺院がマリビルノング川のすぐそばにあるのは、ごく自然なことなのです。信仰を持たない人でも、そのつながりは感じ取れるはずです。
ジョセフ・ロードへの行き方
いちばん簡単なのは電車を使う方法です。フッツクレー駅へは、サンベリー線、ウェリビー線、ウィリアムズタウン線に乗れば、サザンクロス駅やフリンダース・ストリート駅からほんの数駅で着きます。駅を出たら、川とジョセフ・ロードのある南へ向かって歩きましょう。
- 電車: フッツクレー駅で降り、ジョセフ・ロード地区を少し歩きます。
- 徒歩・自転車: すぐ近くをマリビルノング・リバー・トレイルが通っています。フッツクレー埠頭(Footscray Wharf)から水辺に沿って歩いたり、自転車で走ったりして向かえます。
- 車: 工事が続いているため、このあたりの路上駐車のルールはよく変わります。車を離れる前に、その日の標識を必ず確認してください。
平日の静かな時間帯を狙う
開門時間が短いので、計画は時間に合わせて立てましょう。毎日9:30amに開門し、月曜から金曜は3:30pm、土曜と日曜は4pmに閉まります。夕方近くに行っても門は閉まっています。
混雑の傾向がはっきりしているので、いつ行くかは迷わずに決められます。平日の10am〜3pmがいちばん落ち着いており、開門時間のほぼすべてがこれにあたります。この時間帯なら、後ろに人が並ぶのを気にせず祭壇の前に立てます。一方、週末は事情がまったく違います。土曜と日曜の10am〜4pmはできるだけ避けてください。この時間がいちばん混み合い、しかも閉門までずっと続くからです。
週末しか行けない場合は、9:30amに到着するようにしましょう。混み始める10amまで、少しだけ静かな時間を過ごせます。
媽祖を祀る寺院にとって、一年でいちばん大切なのは旧正月と媽祖の誕生日です。誕生日は旧暦3月23日で、たいてい4月か5月にあたります。この日はかなりの混雑を覚悟してください。盛大な祭礼を見たいならこうした日を選び、静けさを求めるなら避けるとよいでしょう。
境内の見どころ
本殿の祭壇の中心にいるのが媽祖です。たいていは衣をまとい、玉飾りの冠をかぶって座った姿で表されています。前には供え物が並び、参拝者は火をつけた線香を両手で持って頭を下げます。周りには、現役の中国寺院ならではの光景が広がっています。
- 線香を立てる、青銅製や石造りの大きな香炉
- 賽銭箱
- 供え物の果物や花が並んだ台
- ふらりと立ち寄っては頭を下げ、線香を立てて数分で帰っていく人々
じっくり見て回るなら、30〜45分ほどみておきましょう。急ぐことなく境内を歩き、しばらく腰を下ろして、人々が祈る様子を静かに眺めるには十分な時間です。写真好きの人はもっと長く滞在することも多いようです。赤と金の色彩は、光がやわらかく行き渡る午前の遅い時間にいちばん映えるからです。
祈りの場でのふるまい
ここは人々が祈りに訪れる場所だということを忘れないでください。マナーは難しくありませんが、寺院を支えるボランティアの方々は、それが守られているかどうかをよく見ています。
- 控えめな服装で。 肩を覆い、丈の短すぎるショートパンツは避けましょう。
- 静かに入り、 祭壇の近くでは声を落としてください。スマートフォンはマナーモードにしておきましょう。
- 戸口の高い敷居は踏まないこと。 中国寺院のしきたりでは、敷居はまたいで越えます。
- 参拝者を撮影するときは、先にひと声かけましょう。 建物の撮影はたいてい問題ありませんが、祈っている最中の人にレンズを向けるのは失礼にあたります。
- 座るときは足の裏を祭壇に向けないこと。 像や供え物にも触れてはいけません。
- 線香をあげて参加するのは大歓迎です。 線香を両手で持って3回お辞儀をし、香炉に立てます。線香の近くに賽銭箱があれば、お気持ちを入れるのが一般的な礼儀です。金額は自由です。
竹の棒が入った筒を振っている人がいたら、女神にお伺いを立てているところです。いわゆるおみくじです。少し離れたところから静かに見守り、そばに張りつかないようにしましょう。
参拝のあとはフッツクレーの味を
フッツクレーはメルボルンでも指折りのベトナム料理の街なので、食事の時間も確保しておきましょう。駅のほうへ戻るとホプキンス・ストリート(Hopkins Street)があり、この街の台所であるフッツクレー・マーケット(Footscray Market)にたどり着きます。マーケットの中には次のような店が並んでいます。
- 精肉店や鮮魚店
- アジアの青菜やハーブを山と積んだ店
周辺の通りには、フォーやブンボーフエ、バインミーを出す店がひしめいています。
一日の順番も大切です。寺院は午後の早い時間に閉まるので、先に参拝を済ませ、そのあと遅めの昼食をとりましょう。週末なら、駅の近くで朝早くフォーを食べてから、9:30amに合わせてジョセフ・ロードへ歩いて向かうのもおすすめです。
川沿いを歩く
寺院のいちばんのお隣さんはマリビルノング川です。ジョセフ・ロードから川沿いの小道に出れば、フッツクレー埠頭を通り過ぎながら水辺を散策できます。かつての港湾地区には、今では遊歩道やサイクリングロードが整備されています。起伏のない道をのんびり一周するのは、参拝のあとにぴったりです。この地で媽祖が担う役割を思わせる川の流れが、すぐそばに広がっています。
上流へ進むとフッツクレー・パーク(Footscray Park)周辺の緑地に出て、対岸にはフレミントン競馬場が見えます。電車に乗り、寺院を訪れ、麺をすすって川沿いを歩けば、インナーウェストでたっぷり半日を過ごせます。メルボルンを訪れるほとんどの人が知らない、この街のもうひとつの顔です。
よくある質問
天后宮がいちばん空いているのはいつですか?
平日の10am〜3pmがいちばん落ち着いています。最も混み合うのは週末の10am〜4pmです。土曜か日曜に行くしかない場合は、9:30amの開門と同時に着くようにしましょう。
開門時間を教えてください。
毎日9:30amに開門します。閉門は月曜から金曜が3:30pm、土曜と日曜が4pmです。
公共交通機関での行き方を教えてください。
サンベリー線、ウェリビー線、ウィリアムズタウン線のいずれかに乗り、フッツクレー駅で降ります。サザンクロス駅やフリンダース・ストリート駅からは数駅です。駅から南へ少し歩くと、マリビルノング川近くの20 Joseph Rdに着きます。
所要時間と服装の注意点を教えてください。
30〜45分ほどみておきましょう。現役の祈りの場なので、肩を覆い、丈の短すぎるショートパンツは避けてください。声は控えめにし、祈っている人を撮影するときは先にひと声かけましょう。
近くにはほかに何がありますか?
フッツクレー・マーケットや、ホプキンス・ストリート周辺のベトナム料理店まで歩いてすぐです。参拝のあとに川沿いを散歩したいなら、マリビルノング川沿いの小道やフッツクレー埠頭も近くにあります。
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