ドビー・ゴート周辺のペナン・ロードを歩くと、ショッピングモールやオフィスビルが続きます。その先に現れる陳旭年邸には、今も思わず足を止める人が少なくありません。1880年代にガンビールと胡椒の交易で財を成した豪商のために建てられた屋敷で、シンガポールに残る数少ない伝統的な潮州式の中庭付き邸宅のひとつです。
花崗岩の柱や優美に反り返った屋根は、まわりのガラス張りのビル群とはまったくの別世界です。
現在はこの建物の一角にバー・カップが入っています。多くの旅行者がタクシーの窓越しに眺めるだけの建物へ足を踏み入れるのですから、一杯目を注文する前から特別な夜が始まっているといえるでしょう。
邸宅がバーにもたらしたもの
バー・カップの雰囲気は、一から作り上げたものではなく、建物から受け継いだものです。木彫りの衝立も、模様入りの陶製床タイルも、頭上の重厚な梁も、演出のために後から取り付けた模造品ではありません。いずれも創建当時のもの、あるいは丁寧に修復されたものです。
メインルームの中央にはY字形のバーカウンターがあります。全員が一方の壁を向くのではなく、視線が空間のあちこちへ分かれるよう角度がつけられています。ここに座れば、市内のたいていのカクテルメニューよりも古い、建物を支える梁の下でグラスを傾けることになります。
ペナン・ロード側の入口の見つけ方
邸宅はペナン・ロードから少し奥まった場所にあり、創建当時の門の向こうに建っています。最寄りは南北線、北東線、サークル線が乗り入れるドビー・ゴート駅で、プラザ・シンガプーラやオーチャード・ロードの端からも歩いてすぐです。
建物が保存対象であるうえ開業して間もないため、案内表示はほとんどないかもしれません。店舗の看板ではなく、門のある中庭を目印に探してください。入口はバーというより個人の邸宅を訪ねるような趣ですが、驚かないでくださいね。
- 最寄り駅:ドビー・ゴート駅(NS/NE/CC線)
- 目印:通りから奥まった、門のある潮州式の邸宅(にぎやかな商業ビル群の向かい側)
- 周辺:プラザ・シンガプーラ、イスタナ、フォート・カニング・パーク
保護建築ならではの予約事情
バー・カップは国定記念建造物に指定された保存建築の中で営業しています。もともと現代のバーの客入りを想定して造られた建物ではないため、収容人数にはどうしても限りがあります。飛び込みで運に任せるより、予約をしておくほうが確実です。Y字形のカウンター席を希望する場合はなおさらでしょう。
開業直後の数か月は情報が変わりやすいため、最新の営業時間や予約方法は出かける前にお店へ直接ご確認ください。服装は歴史的建造物を訪れるときの感覚で選ぶとよいでしょう。正装までは必要ありませんが、ビーチサンダルや水着の上に羽織るような格好では、木彫りの衝立の前で浮いてしまいます。
Y字形カウンターの楽しみ方
たいていのバーは長いカウンターを一本設け、客の並びは成り行きに任せています。バー・カップのY字形のレイアウトはそれとは異なり、一直線ではなく三つの方向から客を迎えるように部屋を区切っています。
そのため、一般的なバーのような「特等席」はあまりありません。カクテルが作られる様子を、ほかのバーテンダーの後ろ姿越しではなくさまざまな角度から眺めたいなら、Yの字の腕が交わる位置の席をお願いしてみてください。
二つの人生を歩んだ中庭付き邸宅
陳旭年はこの家を一族の私邸として、潮州式の中庭建築にならって建てました。花崗岩と木材を用いた造りは、1900年代初頭にはすでにシンガポールで珍しくなりつつあったものです。その後の100年で、建物は救世軍の施設や大学の学部校舎など、まったく異なる用途を経て、全面的な修復に至りました。
こうした幾重もの歴史こそ、シンガポールで次々に生まれる話題の店のなかでも、バー・カップをひときわ個性的な存在にしています。ショップハウスの改装店でも、摩天楼を見渡すルーフトップでもありません。記念建造物級の邸宅が街の移り変わりをいくつも乗り越え、かつての住人の誰ひとり想像しなかった役割を今担っているのです。
周辺散策と組み合わせて
ペナン・ロードからセレギー・ロード(Selegie Road)にかけては、ぶらぶら歩くと楽しい界隈です。そのため、バー・カップは最初の一軒より、夜の締めくくりの目的地にするのが向いています。明るいうちに着くなら、飲む前にすぐ近くのフォート・カニング・パークを散歩するのもよいでしょう。
オーチャード・ロードのショッピング街から向かう場合は、邸宅までの道のりを気分を切り替える時間として楽しんでみてください。モールがまばらになり、車の騒音が静まったかと思うと、邸宅の門がふいに姿を現します。
お出かけの前に
バー・カップは、ふらりと立ち寄るより、少し計画を立てて訪れるほど楽しめる場所です。歴史ある空間そのものが最大の魅力ですから、ドリンクメニューだけでなく建物自体をじっくり眺める時間も取っておきましょう。
- 開業して間もないため、営業時間も予約の方針も変わる可能性があります。訪れる前にお店へ直接ご確認ください
- 暗くなる前に外観の門や中庭を楽しめるよう、日が残るうちに到着しましょう
- 掲示されている説明以上のことを知りたければ、潮州建築の意匠についてスタッフに尋ねてみてください
- 近くのフォート・カニング・パークやイスタナの散策と組み合わせるのもおすすめです
よくある質問
バー・カップは具体的にどこにありますか?
ペナン・ロードに建つ陳旭年邸の中にあります。陳旭年邸は19世紀に建てられた潮州式の邸宅を修復したもので、ドビー・ゴート駅(南北線、北東線、サークル線)から歩いてすぐです。
予約は必要ですか?
予約をおすすめします。席数の限られた保存建築の中にあるため、飛び込みよりも事前予約のほうが確実です。メインのY字形カウンター席を希望する場合は特にそうです。
シンガポールのほかのカクテルバーと比べて、空間にどんな違いがありますか?
1880年代に建てられた潮州式の中庭付き邸宅の一部を使っている点です。修復された木彫りや模様入りの陶製タイルがあり、現代的なY字形のバーカウンターの上には歴史ある梁が今もそのまま残っています。
夜をたっぷり楽しみたい場合、近くに何がありますか?
プラザ・シンガプーラ、オーチャード・ロードの端、フォート・カニング・パーク、イスタナが、いずれも気軽に歩ける距離にあります。
訪れる前に営業時間を確認したほうがよいですか?
はい。文化財として保護された建物に開業して間もない店なので、営業時間や予約方法は思い込みで判断せず、出かける前に直接確認するのが確実です。
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