時を告げる大砲
午後1時になると、エディンバラの街に「ドン」という砲声が一発だけ響きます。キャッスル・ロックの北側から放たれた音は眼下の新市街にこだまし、一瞬で消えていきます。プリンセス・ストリートを歩く観光客はびくっと身をすくめますが、地元の人の多くは腕時計に目をやるだけです。
この習慣が始まったのは1861年のことです。当時、リースの港やフォース湾に停泊する船は、航海に使う船舶用クロノメーターを合わせるために正確な時刻を必要としていました。カールトン・ヒルのネルソン記念塔には午後1時に落下する報時球(タイムボール)がありましたが、霧に隠れて見えないこともよくありました。
それでも大砲の音なら届きます。こうして船乗りたちは音で時刻を知るようになり、二度の世界大戦中の中断を除いて、大砲は今日まで決まった時刻に撃たれ続けています。
なぜ正午ではなく1時なのでしょうか。よく言われるのは節約のためという説です。12発ではなく1発分の弾で済むというわけです。
ミルズ・マウント砲台にて
大砲が据えられているのは、城の敷地を半分ほど上ったところにある石造りの砲座、ミルズ・マウント砲台(Mills Mount Battery)です。胸壁の向こうに北を望むと、庭園やスコット記念塔、碁盤の目のような新市街の街並みが広がり、その先にフォース湾とファイフの丘が見えます。2001年からは、105mm砲の現代的な野砲「L118軽量砲」が使われています。
儀式はあっという間に終わります。1時の少し前に制服姿の砲手が現れ、観客の目の前で一連の手順をこなします。そして時計が1時を指した瞬間に発射されます。砲台では街中で聞くよりずっと大きな音がするので、小さなお子さん連れの方は耳をふさいであげられるよう準備しておきましょう。
砲台のすぐそばには小さな展示があり、大砲と報時球がどのように連動していたのかを紹介しています。1861年以来この役目を担ってきた歴代の大砲の一覧もあります。10分ほど見ておけば、いま目にしたものの意味がよくわかります。
チケットなしで音を聞くには
砲声を聞くだけなら、わざわざ岩山を上る必要はありません。ただし発射の様子を見たいなら話は別です。ミルズ・マウントは城壁の内側にあるため、城の入場チケットが必要になります。料金や時間指定の入場枠は、エディンバラ城の公式サイトで確認できます。
無料で聞くなら、1時にウェスト・プリンセス・ストリート・ガーデンズ(West Princes Street Gardens)に立ち、北側の城壁を見上げてみてください。砲声が聞こえ、風のない日には小さな白煙が見えることもあります。カールトン・ヒル(Calton Hill)からは、かつての「二つで一組」の仕組みをたどれます。ネルソン記念塔の報時球が落ちたあと、谷の向こうから砲声が届くのです。その時間差から、音が街を横切るのにどれほどかかるのかを実感できます。
キャッスル・ロックへの上り方
城はロイヤル・マイルの最上部、キャッスルヒルを上りきったところにあります。エディンバラ・ウェイヴァリー駅(Edinburgh Waverley)からは急な坂道を歩いて10–15分です。ウェイヴァリー・ステップスを上ってプリンセス・ストリートに出るか、コックバーン・ストリートを上ってロイヤル・マイルを右に曲がりましょう。
最後の区間は石畳の上り坂です。グラスマーケット(Grassmarket)からは、ヴェネルの階段かグラニーズ・グリーン・ステップスを上るとエスプラネードの近くに出られます。坂道では誰でも歩くのが遅くなるので、地図上の所要時間より余裕を見ておきましょう。
1時前に城壁沿いの場所を確保する
多くの人が失敗するのがここです。12時55分ごろにのんびりミルズ・マウントへ向かい、3列にもなった人垣の後ろから見る羽目になってしまいます。
- 早めに着いておく。 1時よりかなり前から、胸壁沿いには人が並び始めます。すでに城内にいる場合は、見学中の展示をきりのいいところで切り上げ、余裕をもって砲台へ向かいましょう。
- 見る角度を決める。 砲手の動きを見たいなら大砲の横に、新市街の上に広がる白煙を撮りたいなら城壁際に立つのがおすすめです。
- 最初から撮影しておく。 発射は一発きりで、はっきり聞こえるカウントダウンもありません。音がしてから録画を始めても間に合いません。
- 柵の内側にとどまる。 砲手は決まった手順に沿って作業しています。大砲に近づきすぎると、係員に下がるよう促されます。
- 曜日を確認する。 日曜日・聖金曜日・クリスマス当日は発射がありません。この大砲に合わせて一日の予定を立てるなら、事前に城の公式サイトで臨時休館がないか確かめておきましょう。
砲声の前とあと
城を見学する日は、この大砲をお昼の目安にするとよいでしょう。午前中に王冠の宝器(クラウン・ジュエル)やグレート・ホールを見て、1時に大砲を見学し、昼食後に残りを回るという人がたくさんいます。城全体を見るなら、少なくとも2〜3時間は見ておきましょう。
城を出ると、エスプラネードからそのままロイヤル・マイルに出られます。坂を少し下れば、スコッチ・ウイスキー・エクスペリエンスやカメラ・オブスキュラがすぐです。崖の下のグラスマーケットまで下りて昼食をとるのもよいでしょう。そのあとはカールトン・ヒルまで足をのばし、かつて大砲と対になっていた報時球を見に行ってみてください。
よくある質問
エディンバラのワン・オクロック・ガンは何時に撃たれますか?
エディンバラ城のミルズ・マウント砲台から、午後1時ちょうどに撃たれます。日曜日・聖金曜日・クリスマス当日は発射がありません。お出かけ前に、エディンバラ城の公式サイトで臨時休館がないか確認しておきましょう。
エディンバラ城の入場料を払わずにワン・オクロック・ガンを見られますか?
音だけなら、プリンセス・ストリート・ガーデンズやカールトン・ヒルで無料で聞けます。ただし発射の様子を見るには城の中に入る必要があります。入場料はエディンバラ城の公式サイトで確認できます。
ミルズ・マウント砲台にはどのくらい早く行けばよいですか?
午後1時よりかなり前に着いておきましょう。胸壁沿いには早くから人が並ぶため、1時直前に着くとたいてい人垣の後ろから見ることになります。
ウェイヴァリー駅からエディンバラ城へはどう行けばよいですか?
急な坂道を歩いて10–15分です。ウェイヴァリー・ステップスかコックバーン・ストリートを上ってロイヤル・マイルに出たら、キャッスルヒルを上ってエスプラネードまで向かいます。
大砲を見たあと、近くで立ち寄れる場所はありますか?
まずは王冠の宝器やグレート・ホールなど、城内の見どころを回るのがおすすめです。城門の外にはロイヤル・マイル、カメラ・オブスキュラ、スコッチ・ウイスキー・エクスペリエンス、グラスマーケットがあります。少し足をのばせば、カールトン・ヒルの報時球も見られます。
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