まずは切妻屋根を数えてみてください。広場の西側には、バラ色や砂岩色に彩られた階段状のファサードが3つ並んでいます。これが1405年からフランクフルトの市庁舎として使われているレーマー(Römer)です。振り返ると、その向かいには木組みの家が6軒並んでいます。木の骨組みは深紅やスレート色に塗られ、上の階は石畳の上へせり出しています。
両者のあいだに立つのがユスティティアの噴水です。正義の女神像は天秤と剣を手にしていますが、珍しいことに目隠しをしていません。フランクフルトの旧市街では、どこへ行くにもこの広場が起点になります。
見た目より新しい6軒の家
目の前の建物のほとんどは、実は再建されたものです。1944年の連合軍の空襲で、フランクフルトの中世の旧市街はほぼ全滅しました。レーマーベルクの東側は何十年ものあいだ瓦礫の山となり、やがて戦後のモダニズム建築が並ぶ一角に変わりました。
レーマーの向かいに並ぶ木組みの家々はオストツァイレ(Ostzeile)と呼ばれ、古い図面や写真をもとに1981年から1983年にかけて復元されました。レーマーのファサードも戦後に修復されたものです。それを知ると、この場所の見え方が変わってきます。彫刻の施された梁もスレート屋根も、生き残ったものではなく、丹念に再現された複製なのです。
本当に戦火を生き延びた建物は、すぐ近くにあります。広場の川寄り、ファールトーア(Fahrtor)のそばに立つ木組みの家ハウス・ヴェルトハイム(Haus Wertheym)は、空襲を無傷で切り抜けた数少ない旧市街の建物のひとつです。
教会、博物館、皇帝の間
家並みのほかにも、広場には見逃せない場所が3つあります。
- アルテ・ニコライ教会(Alte Nikolaikirche):広場の南側に立つ、赤砂岩造りの小さなゴシック様式の教会です。かつては市参事会の礼拝堂でした。内部は簡素で静かで、外の広場のにぎわいとは対照的です。
- フランクフルト歴史博物館(Historisches Museum Frankfurt):川沿いにある中世の館ザールホーフ(Saalhof)を取り込むように建てられた市立博物館です。空襲から再建までの歩みを詳しく知りたい方はぜひ訪れてください。
- カイザーザール(Kaisersaal):レーマーの中にある、戴冠式の祝宴が開かれた広間です。壁には神聖ローマ帝国の歴代皇帝の肖像画が並んでいます。見学できる機会は限られ、市の行事によって左右されるため、予定に組み込む前に市の公式サイトで確認しておきましょう。
教会と博物館の開館時間は季節によって変わります。広場は閉まることがありませんが、これらの施設には閉館時間があるので、出かける前に最新の情報を調べておくと安心です。
戴冠の道を歩く
レーマーベルクは、ある道のりの片側として歩いてこそ魅力が伝わる場所です。1562年から1792年までの2世紀以上にわたり、神聖ローマ帝国の皇帝は聖バルトロメウス大聖堂(Kaiserdom St. Bartholomäus)で戴冠し、その後、祝宴の会場であるレーマーまで行列を組んで歩きました。
この道が戴冠の道(Krönungsweg)です。オストツァイレの裏手から広場を東へ抜けると、新旧市街(ノイエ・アルトシュタット)に入ります。この地区は「ドーム・レーマー計画」として2010年代に再建され、2018年に完成しました。細い路地や小さなヒューナーマルクト(Hühnermarkt)広場、復元された家々が、レーマーと大聖堂の赤砂岩の塔とのあいだを埋めています。
ぜひ往復してみてください。大聖堂へ向かうときは、屋根の向こうに塔がそびえて見えます。帰り道では、路地の先にレーマーの切妻屋根が広がります。立ち止まらなければ10分ほどの道のりですが、きっと何度も足を止めることになるので、実際にはもっと時間がかかるでしょう。
広場へのアクセス
いちばん便利なのはUバーンです。U4とU5が停まるドーム/レーマー駅(Dom/Römer)を出ると、すぐ横が新旧市街です。「Römer」の案内に従えば、2〜3分で広場の石畳にたどり着きます。
トラムなら11番と12番でレーマー/パウルス教会(Römer/Paulskirche)停留所へ。広場の北側のすぐ近くです。ショッピングエリアのハウプトヴァッヘ(Hauptwache)からも、南へ歩いて気軽に行けます。途中には、1848年にドイツ初の自由選挙による国民議会が開かれたパウルス教会(Paulskirche)があります。
車の場合は、中心部の外に停めましょう。旧市街は歩いて回るようにできていますし、広場周辺の通りは歩行者で混み合います。
石畳、グリューワインのマグ、レーマーのバルコニー
広場のちょっとした事情を知っておくと、より楽しめます。
- バルコニーを見上げてみましょう。 レーマーのバルコニーは、フランクフルトの人々が喜びを分かち合う場所です。サッカーチームのアイントラハト・フランクフルトの選手たちは、ここからファンで埋まった広場にトロフィーを掲げてきました。そんな日は、レーマーベルクを横切るだけでもひと苦労です。
- 結婚式に出くわすことも。 レーマーには今も市の戸籍役場が入っています。挙式の日には階段に参列者が集まっていることがあるので、よその家のゲストにカメラを向けないようにしましょう。
- マグにはデポジットがあります。 クリスマスマーケットの温かい飲み物は陶器のマグで出され、代金にデポジット(プファント/Pfand)が上乗せされています。どの屋台に返しても払い戻しを受けられますが、記念に持ち帰ることもできます。毎年のマグを集めている人も少なくありません。
- 現金を持っておきましょう。 マーケットの屋台や小さな売店では、カードが使えないところもあります。
- 石畳に注意。 石の表面はでこぼこで、冬は滑りやすくなります。キャリーケースはガタガタと音を立て、車輪が引っかかりがちです。
レーマーベルクは隠れた名所などではなく、フランクフルトでも指折りの人気スポットです。団体ツアーや川のクルーズ船の乗客、日帰り客が次々と訪れ、その多くは昼ごろにやってきます。広場は閉まることがないので、時間をずらせば混雑は避けられます。切妻屋根に光が当たり、人影もほとんどない早朝か、夜遅めの時間帯に訪れてみてください。
季節で変わる広場の表情
レーマーベルクは季節ごとにさまざまな姿を見せてくれます。
冬には11月下旬からクリスマス直前まで、フランクフルトのクリスマスマーケットが広場と周辺の通りを埋め尽くします。レーマーの前には、飾りつけられた背の高いツリーが立ちます。一年でいちばん混み合う時期なので、家並みをゆっくり眺めるなら平日の午前中が狙い目です。
それ以外の季節は、広場ものびのびとした雰囲気になります。とはいえ祭りやコンサート、市の行事も開かれるので、広場にある観光案内所で尋ねるか、案内所の催し情報で確認してみてください。
川を渡って、また戻って
広場を後にしたら、南へ歩いてみましょう。ザールホーフ周辺を抜けるとマイン川の岸辺に出ます。そこに架かるのが、1869年に造られた鉄製の歩道橋アイゼルナー・シュテーク(Eiserner Steg)です。橋の上からは、振り返れば大聖堂の塔が、前を向けばザクセンハウゼン側の岸が見渡せます。
ザクセンハウゼンは、地元のりんご酒アプフェルワイン(Apfelwein)を楽しむ街です。お酒はベンベル(Bembel)と呼ばれる灰色の陶器の水差しから注がれます。7種類のハーブで作る冷たいソースを卵とじゃがいもに添えたグリューネ・ソーセ(Grüne Soße)や、サワーミルクのチーズを玉ねぎでマリネしたハントケーゼ・ミット・ムズィーク(Handkäs mit Musik)を頼んでみてください。
そうすれば、レーマーベルクは夜のお出かけのすべてではなく、その最初の立ち寄り先になるはずです。
よくある質問
公共交通機関でレーマーベルクへ行くにはどうすればいいですか?
UバーンのU4またはU5でドーム/レーマー駅(Dom/Römer)まで行き、「Römer」の案内に従って歩けば2〜3分で広場に着きます。トラムの11番と12番も、広場の北側に近いレーマー/パウルス教会(Römer/Paulskirche)停留所に停まります。
レーマーベルクには夜も入れますか?
はい、入れます。広場は公共の空間なので24時間開いています。ただし、アルテ・ニコライ教会、歴史博物館、カイザーザールにはそれぞれ独自の開館時間があり、季節によって変わります。出かける前に各施設の公式サイトで確認してください。
レーマーベルクの見学にはどれくらい時間をみておけばいいですか?
広場とアルテ・ニコライ教会を見て、戴冠の道(Krönungsweg)を大聖堂まで歩くなら1時間で十分です。歴史博物館を見学し、アイゼルナー・シュテークを渡ってザクセンハウゼンまで足を延ばすなら、2〜3時間ほど確保しておきましょう。
レーマーベルクのフランクフルト・クリスマスマーケットはいつ開かれますか?
11月下旬からクリスマス直前まで、広場と周辺の通りで開かれます。正確な日程は毎年変わるので、市の公式情報で確認してください。温かい飲み物にはマグのデポジットがかかりますが、マグを返せば払い戻されます。
木組みの家々は当時のままの建物ですか?
ほとんどは違います。オストツァイレの家並みは、1944年に旧市街が破壊されたあと、1981年から1983年にかけて再建されたものです。広場の川寄り、ファールトーアのそばにあるハウス・ヴェルトハイムは、戦火を生き延びた数少ない旧市街の建物のひとつです。
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