背の高いコリント式の円柱が並ぶポルティコがペディメントを支え、その上に石造りの尖塔がそびえています。ところが、ふと周りを見ると、そこはソルトマーケット(Saltmarket)から数本奥に入った、集合住宅に囲まれた静かな広場です。これほどの教会なら立派な大通り沿いにありそうなものですが、まったくそんな場所ではありません。
セント・アンドリューズ・イン・ザ・スクエアが建てられたのは1739年から1756年にかけてのこと。スコットランドでも屈指のジョージアン様式の教会でありながら、中に入ったことのないグラスゴー市民も少なくありません。
集合住宅に囲まれたジョージアン様式の教会
設計を手がけたのは建築家アラン・ドレグホーンで、石工の棟梁マンゴ・ネイスミスと組んで建てました。二人が手本にしたのはロンドンのセント・マーティン・イン・ザ・フィールズです。神殿風の正面とその上の尖塔に、その影響がはっきり見て取れます。建設当時のグラスゴーは大西洋貿易で富を蓄えていた時代で、費用を出したのは当時の商人たちでした。彼らの多くがここで礼拝していたのです。
現在、教会を囲む広場には近代的な集合住宅がほとんどを占めています。この一風変わった立地こそが、ここならではの魅力です。建物は小さな空き地の中にぽつんと立っていて、数分もあればぐるりと一周できます。中に入る前に、ぜひ外を一回りしてみてください。側面の外観や、上部が半円形になった縦長の窓は、広場の角から眺めるのがいちばんきれいです。
ギャラリーと漆喰天井の下で
内部は広々とした明るい長方形の空間です。細い柱に支えられたギャラリー(2階席)が三方を巡っているため、1階のフロアは開放感があり、2階からは真下を見下ろせます。現在コンサートホールとして非常に優れているのも、この造りのおかげです。音がよく響き、どの席からも演奏が遠く感じられません。
天井にもぜひ目を向けてください。ロココ様式の漆喰装飾が施されており、一般にトーマス・クレイトンの作とされています。スコットランドで18世紀を代表する室内装飾の数々を手がけた漆喰職人です。白い漆喰一面に渦巻きや葉模様などの装飾が広がっています。10分ほどの見学だと見落とされがちな部分なので、時間をかけてじっくり眺めましょう。
20世紀後半には建物の荒廃が進みましたが、グラスゴー建築物保存トラスト(Glasgow Building Preservation Trust)によって救われ、2000年前後にスコットランド文化の拠点として再オープンしました。今こうして中に立てるのは、この修復があったからこそです。
尖塔の下で楽しむケーリーの夜
編集部の紹介ではコンサートや結婚式、披露宴と並んでケーリーが挙げられています。博物館のような教会とは違うのは、まさにこの点です。ケーリーとは、スコットランドの社交ダンスの夕べのこと。生バンドが演奏する中、「コーラー」と呼ばれる進行役がゲイ・ゴードンズやストリップ・ザ・ウィローといったリールやジグのステップを声に出して教えてくれるので、初心者でもついていけます。
参加するなら、次の点を知っておくと安心です。
- ステップを知らなくても大丈夫です。 各ダンスが始まる前に、コーラーが会場全体に向けて動きを説明してくれます。
- 動きやすい服装で。 テンポが速く、くるくる回る動きも多いので、ヒールのない靴を履いていきましょう。
- イベントは独自の時間で開催されます。 夜のコンサートやダンスは、平日日中の開館時間とは別に行われます。日程や時間、チケットは会場の案内で確認してください。
- 貸切の日は入れません。 結婚式や披露宴でホールが貸し切られることもあります。わざわざ足を運ぶ前に確認しておきたい理由のひとつです。
セント・アンドリューズ・スクエアへのアクセス
住所は1 St Andrew’s Square, Glasgow G1 5PPです。広場はソルトマーケットのすぐ東、グラスゴー・クロス(Glasgow Cross)とトールブース・スティープル(Tolbooth Steeple)の南にあります。グラスゴー・クロスからはソルトマーケットを南へ下り、セント・アンドリューズ・ストリート(St Andrew’s Street)を左に曲がります。尖塔が目印になるので迷うことはありません。
最寄りの鉄道駅・地下鉄駅は以下のとおりです。
- アーガイル・ストリート駅(Argyle Street、地下ホーム発着の列車)がいちばん近く、アーガイル・ストリートからトロンゲート(Trongate)を東へ歩いて約10分です。
- セント・イーノック駅(St Enoch)はそこから少し西にある地下鉄駅で、グラスゴーの環状線「サブウェイ」が通っています。
- ハイ・ストリート駅(High Street)は、グラスゴー・クロスから北へ少し歩いたところです。
- グラスゴー・セントラル駅(Glasgow Central)に幹線列車で着いた場合は、徒歩でおよそ15〜20分です。
平日にふらりと訪ねるなら
ここはスタッフが常駐する観光施設ではなく、現役のイベント会場です。そのため、訪ね方にも少しコツがあります。
- 月曜〜金曜の午前10時〜午後4時に訪れましょう。 これが現在の開館時間で、土曜と日曜は閉館しています。夜のイベントの準備が午後から始まることもあるので、午前中の半ばごろがいちばん確実です。
- 見て回る前にひと声かけましょう。 入口や受付に人がいたら、内部を見学したいと伝えてください。リハーサルや設営、貸切予約でメインホールが使われていることもあります。
- 音楽が聞こえたら静かに。 ミュージシャンがここで練習していることも多く、音響が良いぶん、話し声もよく響きます。
- 設営済みのホールを撮影するときは許可を。 結婚式用に飾り付けられた部屋は、誰かのプライベートなイベントの場です。
- 周辺散策と組み合わせて。 建物だけなら20〜40分ほど見ておけば十分ですが、天井をじっくり眺めるならもう少し時間をとりましょう。
あまり知られていない場所なので、広場をほぼ独り占めできることも珍しくありません。観光バスもチケット売り場の行列もなく、あるのは扉と大きな部屋だけです。
すぐ隣のグラスゴー・クロスとグリーン
セント・アンドリューズは、市内でもっとも古いエリアを歩いて巡る際の拠点にぴったりです。数分歩けばグラスゴー・クロスのトールブース・スティープルに着きます。かつての自治都市の中心を示す17世紀の塔です。そこからトロンゲートを西へ進むとマーチャント・シティ(Merchant City)に入ります。碁盤の目のように並ぶ通りには、この教会を建てたのと同じ交易商の一族の名が付けられています。
広場から南へ向かうと、市内最古の公園グラスゴー・グリーン(Glasgow Green)に出ます。園内にあるピープルズ・パレス・アンド・ウィンター・ガーデンズ(People’s Palace and Winter Gardens)は、グラスゴーの人々の暮らしを紹介する博物館で、温室が併設されています。反対に東へ向かえば、カルトン(Calton)地区で長く続く市場バラス(the Barras)がすぐ近くです。ただしバラスがいちばんにぎわうのはこの教会が閉まっている週末なので、別の日に出かけるのがおすすめです。
グラスゴー観光の一日に組み込むなら
平日の午前中に立ち寄り、そのあとグリーンかマーチャント・シティへ向かうプランがよいでしょう。週末しか滞在できない場合でも、広場からポルティコと尖塔は眺められます。とはいえ、本当の見どころは内部です。
数日滞在するなら、到着前にイベント情報をチェックしておきましょう。ケーリーやコンサートに参加すれば、この建物が修復された本来の目的どおりに使われている姿を目にできます。ギャラリーは人で埋まり、漆喰天井の下はダンスフロアに変わります。そしてグラスゴー発祥の地からほんの数ブロックの場所で、バンドの演奏が響くのです。
よくある質問
セント・アンドリューズ・イン・ザ・スクエアの内部はいつ見学できますか?
現在の開館時間は月曜〜金曜の午前10時〜午後4時で、土曜と日曜は閉館しています。コンサートやケーリーは独自の日程で開催され、貸切でホールが閉まることもあります。わざわざ訪れる前に、会場の案内を確認してください。
公共交通機関での行き方を教えてください。
アーガイル・ストリート駅(地下ホーム)から、アーガイル・ストリートとトロンゲートを通って徒歩約10分です。地下鉄のセント・イーノック駅やハイ・ストリート駅からも歩いて行けます。広場はソルトマーケットのすぐ東、グラスゴー・クロスの南にあります。
見学にはどのくらいの時間が必要ですか?
広場を一周し、ギャラリーのある内部と漆喰天井を見るなら20〜40分ほどを目安にしてください。夜のイベントに参加する場合は、当然もっと長くかかります。
ケーリーに参加するには、踊れる必要がありますか?
その必要はありません。バンドの演奏が始まる前にコーラーが各ダンスを説明してくれるので、初めての人でもついていけます。回転する動きが多いため、ヒールのない靴で参加しましょう。
近くにはほかに何がありますか?
グラスゴー・クロスのトールブース・スティープルまでは徒歩数分です。すぐ南にはグラスゴー・グリーンとピープルズ・パレス・アンド・ウィンター・ガーデンズがあり、トロンゲートを西へ進むとマーチャント・シティに出ます。
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